O₂濃度による汚染物質の濃度換算

(なぜ､O₂濃度による汚染物質の濃度換算を行うのか)

HClなどの大気汚染物質の計測は､通常､煙突で行います｡しかし､煙突では､｢空気を追加して薄めたガス｣が流れており､薄める前の濃度を知る必要があります｡

｢空気を追加して薄めた｣ことは､ガス中のO₂濃度に､その証拠が残ります｡たとえば､炉出口でのO₂濃度が8%であっても､空気を追加して薄めると､煙突出口ガスのO₂濃度は､10%､13%､16%･･･と薄めるほど限りなく21%に近づきます｡

そこで､煙突で大気汚染物質の濃度を計測するのと同時に､O₂濃度も計測し､｢薄める前の大気汚染物質濃度｣を推定する必要があります｡これが､｢O₂濃度による汚染物質の濃度換算｣です｡

(空気を追加して薄めた場合のマスバランス)

図をみてください｡焼却炉(furnace)からV_Fのガスが排出され､そのα倍の量の空気(=αV_F)を加え､煙突から(1+α)V_Fのガスが排出されます｡

焼却炉ガスV_F:

□ = 炉出口ガス量 ×炉出口でのO₂濃度

□ = 炉出口ガス量 ×炉出口でのO₂以外のガスの濃度

□ =炉出口ガス量 ×炉出口での大気汚染物質濃度

薄め空気:

□ = 炉出口ガス量のα倍の空気×0.21(空気中O₂濃度)

□ = 炉出口ガス量のα倍の空気×0.79(空気中O₂以外のガスの濃度)

煙突ガス:

□ =煙突から排出されるガス量

です｡

煙突(stack)で計測される排ガス中大気汚染濃度は､炉出口ガス中の大気汚染物質濃度を､α倍の空気で希釈されたものですから､

です｡

煙突(stack)で計測される排ガス中酸素濃度は､炉出口ガス中を､α倍の空気で希釈されたものですから､

です｡

以上の関係から､αを算出し､炉出口ガスでの大気汚染物質濃度を算出しますと､

となります｡大気汚染を規制する際には､｢薄めすぎず､濃すぎず｣の条件を設定する必要があり､｢炉出口ガスのO2濃度が12%であったはず｣という共通ルールから､

の式を得ます｡

(計算例)

煙突出口ガス中のHCl濃度が20ppmVで､そのガスのO₂濃度が14%であった場合､O₂ 12%換算濃度は､

です｡

煙突出口ガス中のHCl濃度が20ppmVで､そのガスのO₂濃度が8%であった場合､O₂ 12%換算濃度は､

です｡希釈された濃度から希釈される前の濃度を推定する式は､同様に､規定濃度まで希釈した場合の濃度を推定する場合にも使用できます｡

(おわり)

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