ヘンリー定数からヘンリー･ボラティリティ(無次元)へ□□□Henry Constant to Nondimensional Volatility

ヘンリー定数一般的な表現Henry Constant, Conventional

ヘンリー定数は､水と気体が存在する系で､化学物質が平衡状態にあるとき､水中濃度と気中濃度の比です｡例を挙げます｡O₂の場合､ヘンリー定数は､1.3×10^-5 mol m^-3 Pa^-1です｡ヘンリー定数の値は､Sander R(2023)による編纂がとても頼りになります｡

R. Sander: Compilation of Henry's law constants (version 5.0.0) for water as solvent, Atmos. Chem. Phys., 23, 10901-12440 (2023), doi:10.5194/acp-23-10901-2023

2023 Oct に発表されたVer 5.0.0は､1500ページもあります｡SANDER Rolfによると､もう､｢2015のバージョンは引用しないでね｣と言っています｡

引用してほしくないバージョン: Sander R(2015) Compilation of Henry’s law constants (version 4.0) for water as solvent. Atmos Chem Phys 15:4399–4981

ヘンリー･ボラティリティ(無次元) Henry Volatility,Nondimensional

ヘンリー定数の単位であるmol m^-3 Pa^-1はなじみが薄いかもしれません｡体積濃度/体積濃度に換算しましょう｡気中分圧1 Paということは､｢気体1 m³中に0.0004038 mol存在する｣に相当します｡この値は気体の状態方程式から計算されます｡

すなわち､｢水中に1.3×10^-5 mol/m³､気中に0.0004038 mol/m³｣が平衡状態であることが分かります｡水中の濃度が1 mol/m³であるときの気中濃度を比例計算で計算すると､31.06 mol/m³になります｡

1 m³の水と1 m³の空気が接触していて､水の中に1 mol､空気の中に31.06 molが存在しているという計算ができます｡この値は､O₂のヘンリー定数を読み替えたもので､ヘンリー･ボラティリティ[-]と呼ばれるものです｡

他のガスで計算 About Other Gases

他のよく知られているガスについても計算しましょう｡

H₂のヘンリー定数7.8 × 10^-⁶ mol m^-3 Pa^-1から､H₂のヘンリー･ボラティリティ51.8が得られました｡

CH₄のヘンリー定数1.4 × 10^-⁵ mol m^-3 Pa^-1から､CH₄のヘンリー･ボラティリティ28.84が得られました｡

CO₂のヘンリー定数3.3 × 10^-4 mol m^-3 Pa^-1から､CO₂のヘンリー･ボラティリティ1.224が得られました｡

Cl₂のヘンリー定数9.2 × 10^-4 mol m^-3 Pa^-1から､Cl₂のヘンリー･ボラティリティ0.439が得られました｡

Hgのヘンリー定数1.1 × 10^-3 mol m^-3 Pa^-1から､Hgのヘンリー･ボラティリティ0.367が得られました｡

SO₂のヘンリー定数1.3 × 10^-2 mol m^-3 Pa^-1から､SO₂のヘンリー･ボラティリティ0.0310が得られました｡

きわめて水に溶けやすいガスとして､NH₃とHClの場合を例示します｡

NH₃では､水中の1に対して､気中で0.00068だけです｡

HClでは､水中の1に対して､気中で0.000027だけです｡

無次元ヘンリー･ボラティリティは､物質収支や物質移動に関わる計算を行う際に便利です｡

(おわり)

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