重力レンズ(gravitational lens)は、恒星や銀河などが発する光が、途中にある天体や銀河の重力によって曲げられたり、その結果として複数の経路を通過する光が集まるために明るく見えたりする現象である。
本研究では、観測者と光源の間にブラックホール(BH)があったとき、重力レンズ(光学レンズ)により曲がる光の進路を2つのモデルで考えた。1つ目は、レンズ効果を引き起こすBHが1点にあり「レンズ方程式《を解くモデルである。2つ目は、実際に光学的なレンズを置いたと想定して光学的な光の屈折を解くモデルで、光学レンズは中心軸(Z軸)付近が凸型で中心軸を投影面(x,y)上を自由に設定できるように考え、各方向から観測者に到達する光線を特定して「像《とみなすことにした。y-z面の断面の関数形をy(z)=C/(Z-Z’)として、レンズはZ>Z’のみにあると考え、屈折率をnと置いた。この2つのモデルを比較しシュバルツシルト半径が1のブラックホールで両モデルが一致するようなパラメータCを特定した(図1)。
次に、ブラックホールをY軸方向にずらしたときに観測者からどう見えるかをシミュレーションしたものが図2である。「アインシュタインの十字架《と呼ばれるものの像に近いものが得られた。また、レンズ物体が2つのブラックホールの場合の重力レンズの論文の結果を比べ、1986年になされた解析解と比べた。この結果は論文の方で詳しく述べる。
図1:アインシュタインリングで計算結果が一致したことを示す図 図2:ブラックホールがY軸上にずれたときの図