大阪工業大学 情報科学部 宇宙物理・数理科学研究室 2022年度 卒業研究
量子コンピューティングにおける量子ゲートの模擬と運動方程式の時間発展
情報システム学科 吉田就
2023/2/14 作成
概要 / 目次 /
概要
本研究は、量子コンピュータにおける量子ビットの制御と計算アルゴリズムの一例を古典コンピュータを用いてシミュレートした。以下の2つについて報告する。
(1)シュレーディンガー方程式の時間発展による量子ゲートの模擬
量子コンピュータの基本単位である1量子ビットの制御をシュレーディンガー方程式を解くことによってシミュレートした。量子状態を表す波動関数ψ(x,t)のふるまいを二重井戸型ポテンシャルの形状を変化させることで制御する例を示した。ポテンシャルの底が|0>,|1>の状態に対応するものとして、時間発展は2次精度で、周期的境界条件、クーラン数1/100を用いた。 図1はポテンシャルの二つの底の位置を|ψ|2が遷移し続ける様子である。図2は途中でポテンシャルの底を一方のみと変更することで、量子ビットの状態が片方に固定できることを示した。これはSWAPゲートに相当する。図3は途中でポテンシャルの二つの底を深くすることで、量子ビットの状態を2つのポテンシャルの底の両方に捕捉できることを示した。これはアダマールゲートに相当する。
(2) Harrow-Hassidim-Lloyd (HHL)アルゴリズムを用いた運動方程式の時間発展
量子コンピュータは大規模な行列計算を得意とする。運動方程式の時間発展に応用するためにHHLアルゴリズムで強制振動の方程式を解いた。時間方向2次精度をもたせるため、Newmarkβ法を用いた。状態ベクトル(x,v)を多数用意し、時間発展行列をブロック化し、拡大させることで運動方程式を複数同時に解くことが出来る。図4は、過減衰(紫)、臨界減衰(緑)、振動減衰(青)の三つをHHLアルゴリズムで同時に解いた例である。初期条件はいずれも共通だが運動方程式のパラメータが異なる。
論文では、量子コンピュータの原理とアルゴリズムについて解説している。![]()
図1 ポテンシャルエネルギーの2つの底を、|ψ|2 が遷移する例 図2 ポテンシャルエネルギーを途中で一方のみと変更すると|ψ|2 が捕捉される例
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図3 ポテンシャルエネルギーの2つの底を途中で深くすることで、2つの底に|ψ|2 が捕捉される例 図4 HHLアルゴリズムを用いて、同時に解いた3つの強制振動の時間発展
目次
- 序論
- 背景
- 本研究の目的
- 本論文の構成
- 量子コンピュータの動作原理について
- 量子ビット (qubit)
- 量子ゲート
- 量子回路の応用
- シュレーディンガー方程式の時間発展による量子ゲートの模擬
- シュレーディンガー方程式
- 本研究のシュレーディンガー方程式の解き方 .
- ゲート模擬
- Harrow-Hassidim-Lloyd (HHL) アルゴリズム
- 量子アルゴリズムにおける HHL アルゴリズム
- 本研究における HHL アルゴリズム
- まとめ
- 卒業論文はこちら→ 卒業論文[pdf]
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