・研究の背景
近年の計算機性能の向上に伴い、計算機の支援による作業能率は飛躍的に向上してきた。しかし、いかに計算機の性能やインタフェースの性能が優れていたとしても、その計算機を利用するユーザの作業意欲が低下すれば、作業能率の向上は望めないという問題がある。そこで文書作成のような自動化が困難な作業に計算機が利用される場面での作業者の能率は、計算機の性能だけでなく、作業者の意欲に依るところが大きいとされている[1]。したがって自動化が困難かつ作業意欲の低下が顕著である単純作業の場において、作業者の作業意欲を維持向上させる働きが作業能率の維持向上に対して有用であるといえる[2]。
・先行研究
この問題に対する先行研究として、作業意欲を維持向上させることを目的としたエンタテインメントシステムの開発が行われてきた[3]。このエンタテインメントシステムは仮想樹木モデルを用いて、ユーザの作業量に応じてデスクトップ上に表示した仮想樹木が成長するというものである。しかし先行研究の問題点として、表示される内容が一定なことによる多様性の低さ、仮想樹木というモデルを使用したことによってその成長が容易に予測可能であり、ユーザのシステムに対する興味が急速に失われたことが挙げられている。つまり先行研究のエンタテインメントシステムではエンタテインメント性の持つ「楽しさ」が損なわれたという問題を抱えている。
・研究目的
「楽しさ」が発生する諸要素[4]を考慮したエンタテインメント性を提供するアプリケーションの開発
・アプリケーション概要
作業者に気分転換を促し、作業意欲の維持向上に働きかけるアプリケーション
・主要機能
①ユーザが選択したジャンルの最新のニュース記事を作業環境に提供する機能
②ニュース記事に対して表情、仕草と共にメッセージを付け加え、「変身」の概念を取り入れたキャラクタを表示する機能
③アプリケーションにユーザの情報を反映させる個別化の機能
Copyright c Human Interface lab., Osaka Institute of Technology, 2007 Allrights reserved.
参考文献
[1]トム・デマルコ,ティモシー・リスター:ピープルウェア;日経BP社,pp.156-157(2001).
[2]山下京:産業場面における認知的評価理論の有効性の検討;対人社会心理学研究,第1号,pp.37-44(2001).
[3]倉本到,大塚茂樹,柏木一将,渋谷雄,辻野嘉宏:作業意欲を向上させるエンタテインメントの計算機作業環境への提供;ヒューマンインタフェース学会論文誌,Vol.6,No4,(2004).
[4]ロジェ・カイヨワ:遊びと人間;講談社学術文庫(1990).
・アプリケーション起動時の画面
・「変身」の機能
ユーザが選択したニュースジャンルの閲覧回数を内部的に記録して、それに合わせて擬人化キャラクタの見た目と言葉遣いを変化させる機能
Q.あなたのあだ名は?
A.マイケル
・「個別化」の機能
テキストファイル形式の質問文からユーザの情報を読み取り、メッセージ内に反映させる機能
B03179 山野泰誉