あらゆる側面で、入学前の期待を超えるOIT。
その取り組みの一部を通して、
輝く未来へ向けて成長を続ける学生の姿を見ていく。
空間に描いたバーチャルが
その場で現実世界に投影される
直感的な3Dペイントアプリを開発。
情報科学部 情報メディア学科 2023年 3月 卒業
Visual Computing研究室
情報科学研究科 情報科学専攻 1年次
中井 一斗さん
兵庫県・兵庫県立浜坂高等学校 出身
スマートフォンなどのデバイスに映した実在風景に、3Dキャラクターや画像・文字情報などの仮想的な情報を重ねて映し出すAR(Augmented Reality)技術。ゲームアプリはもちろんのこと、現在では、洋服の試着や家具の試し置きなど、いろいろな業界で採用されるようになっています。
アートの世界でも採用が増えていますが、現在、ARアートを作成する際は、3Dモデリングソフトで作成した作品を、ARアプリなどで現実世界に投影する形が主流。そのため、現実世界に投影して修正点が見つかると、再びモデリングソフトに戻って修正し、またARアプリで投影する、といったように、複数のアプリケーションを行ったり来たりすることになります。「この手間を省けないか」。そう思ったのが研究の発端でした。
研究では、マイクロソフト社が開発した「HoloLens2」という機材を用いて、現実空間に合わせた3次元デザインアートを直感的に描くことができるアプリを作成しました。HoloLensに搭載されているMR(Mixed Reality)の技術を使い、3次元アートをそれひとつで作成できるペイントアプリケーションです。簡単に言うと、たとえば空間に動物を描いたら、その動物があたかも実際にいるように映し出すことができる、といった感じでしょうか。この技術と、GPSの座標情報から空間を計測する技術と組み合わせれば、その空間に合わせてARアートを自動表示することも可能になります。
開発で苦労したのは、とにかく知識が乏しかったことです。HoloLensという機材はあっても、そのアプリを作成できる有識者が周囲に誰もいないところからのスタート。どんな開発ツールが必要かすらわからない状態から、一つひとつ手探りで調べていくうちに理解が進み、気づけば自由に作成できるようになっていきました。研究室の壁やテーブルに合わせて文字やイラストを表示できたときの達成感は、忘れられません。
完成したアプリケーションは、研究室仲間はもちろん、大学の学園祭でも公開しました。子どもから中年の方まで幅広い世代の方に触れていただき、「楽しかった」「すごいね!」と好反応をいただけてとても嬉しかったです。
もともと普通科高校出身で、授業でも壁にぶつかることが多くありました。その度に友人に聞いたり、インターネットを利用して調べてきた力が、研究でも活かされました。大阪工業大学に入学して、受け身だった自分が自ら質問したり行動したりするようになったこと、知らない物事に対しクリアすべき課題を見つけ、一つひとつ調べて解決していく力は、非常に成長したと感じます。
はじめは知識や経験が足りず、つまづくことがほとんどです。しかしそこで経験したことが点だとすると、いつかそれらが線でつながり、「ああ、こういうことだったのか!」と理解できるようになる。その瞬間が好きで、一番成長を感じます。
もちろん、自分の力だけでは達成できなかったと思います。研究の過程でも、研究室仲間や先生方にアドバイスをもらったり、3Dでのイラスト作成も、絵の上手な研究室の友人に描いてもらったりしました。在籍している研究室はデバイスが非常に豊富で、大学院の先輩からもアドバイスがいただけたことは、大きな助けになりました。
春からは大阪工業大学の情報科学研究科に進学します。ここの大学院は設備面でも不自由がなく研究できますし、様々な新しい知見に触れる機会があります。現在気になっているテーマは、機械学習を用いて画像から3次元モデルを作成する手法の研究や、現実空間をサーバー空間内に再現するデジタルツイン技術の研究。これからも、IT技術を通じ、人がより楽しく人生を過ごすことができる未来に貢献していきたいと思います。
設計から素材選び、プログラミングまで、あらゆる知識と技術を駆使するチームワークで、これまでにないものづくりに挑む。
工学部 機械工学科 4年次
環境エネルギー材料研究室
藤定 悠太さん
兵庫県・兵庫県立加古川北高等学校 出身
私がPBL(課題解決型学習)で取り組んだのは、パイプメンテナンスロボットの製作。普段の授業では、工学的な理論は数々学びますが、それらが実際に製作の現場でどのように活かされているのかは、なかなかイメージしづらいものでした。頭で学んだことを、手を動かして身体で理解する。PBLは貴重な経験だったと思います。また、ロボットの製作を通じてプログラミングや電装の配線など、授業で触れた様々な知識を、もう一歩踏み込んで学びたい、という期待もありました。いよいよPBLが始まり、私たちに与えられたのは「先輩と同じものをつくらない」という条件。パイプの中をスムーズに移動することが求められるのですが、先輩方も様々な工夫と技術でミッションをクリアされていました。同じモノを製作しては自分たちの学びにならないということはわかりますが、前例がないということは、参考にできるデータもないということ。5人のメンバー、それぞれが知恵を絞り案を出し合うところから、プロジェクトが始まりました。
私たちならではの独自性を重視し、設計のテーマとして決めたのは「コンパクト化」。正四面体の本体を製作し、移動を補助するタイヤを取り付けたのですが、これが動かない。どうすれば動くのかもわからない。ものづくり初挑戦の私たちは設計ミスの経験すら初めてだったのです。結局、チームメンバーだけでは結論を出せず、先生にアドバイスをいただいて解決できました。また、パーツ用の材料を発注し、届いたものを加工しようとしたところ堅すぎて歯が立たなかったということもありました。驚くのは、その素材のことを知らなかったのではない、ということ。授業で習ったことを活かせなかった。知識は知っているだけでは役に立たないことを痛感した出来事として、印象に残っています。
様々な試行錯誤を経て、ロボットが完成。パイプの中を指定した位置まで登り、一定時間が経てば地面から数10cmのところまで降りる。昇降に伴う高さの変化はセンサーで検知し、動作はすべてプログラムで制御しています。成功したときの達成感は、PBLでの一番の思い出になりました。
このプロジェクトを通じて自分が変わったと感じるのは、周りの人を頼れるようになったこと。学内には、各専門分野を究めた先生方が多数おられます。インターネットで情報が簡単に手に入る時代ですが、専門知識は先生方に相談するのが一番信頼でき、丁寧に教えてくれます。ともに学ぶ仲間たちも、それぞれ得意分野があり、親身に話を聞いてくれる頼もしい存在。逆に私も、誰かに頼られたら精一杯応えたいと思います。そして、何事にも積極的になれました。主体的に、自分で考えて動く。「やってみよう」と、まずは体験してみることにしています。理論で学んだことを、手を動かして、活かす知識として自分のものにする。自信や人間性の面でも、成長できました。これからも、前向きに学びを深めていきたいと思います。
湖の上空を飛ぶ日に全力を注ぐ。
仲間との絆と、あきらめない心が
夢を支え続ける。
大阪工業大学人力飛行機プロジェクト 2023年パイロット
工学部 機械工学科 4年次
石田 嵩晴さん
大阪府・大阪府立北千里高等学校 出身
滋賀県・琵琶湖で開催される「鳥人間コンテスト」(読売テレビ主催)。「大阪工業大学人力飛行機プロジェクト」は、2012年の初出場以来、毎年同大会に挑み続けています。
飛行機やロケットに憧れ、「航空部があり、ものづくりが学べる大学」という点で大阪工業大学に入学。航空部の先輩に誘われたことがきっかけで、このプロジェクトに参加し始めました。機体のプロペラを作る「プロペラ班」、翼を作る「翼班」などいくつかのグループに分かれて活動しており、工学部だけでなく、ロボティクス&デザイン工学部や知的財産学部の学生も所属。全員がそれぞれの持ち場で、鳥人間コンテストという一年に一度の共通の目標に、一丸となって挑戦しています。
僕自身は、1年次からプロペラ班に所属。工作機械が自由に使える大阪工業大学では、他大学のチームが外注している切削加工も自分たちで行うため、金属加工や木材加工の技術を磨きながらプロペラを作り上げます。中央の棒状の部品がひとつしかないため、いわゆる「試作品」を作ることができず、一年かけて作るプロペラはたった1つ。その上、塗装だけをとっても、その塗り方次第でプロペラの重量を大きく左右するため、それぞれの工程で失敗が許されません。想定していた設計時の角度通りに加工ができなかった時には、ヒートガンで加熱して修正するなど、緻密な作業が連日続きます。非常にきめ細かなものづくりですが、その分、自分たちが作ったプロペラで機体がちゃんと空を飛んだときはこの上なく感動し、生涯忘れられない体験になります。
パイロットを最初に志願したのは昨年の大会前でした。プロペラ加工に取り組むうち、「こうして作った飛行機で、自分の足で空を飛びたい」と思うようになったのです。大学1年次の時からトライアスロンに興味を持ち自転車をしていたので、体力には自信がありましたが、パイロットの選抜テストでは、初フライトから安定した操縦を見せた先輩パイロット志願者に、操縦技術では全くかないませんでした。悔しかったと同時に、昨年の大会終了後、「来年は必ずパイロットになり、その先輩がはじき出したチーム記録を絶対に更新する」と自分に誓いました。
念願叶い、2023年度大会ではパイロットに選出されました。運動生理学を専門とする西脇雅人先生(工学部総合人間学系教室准教授)にトレーニングメニューを作成してもらい、筋力や心肺機能を強化。また、フライトシミュレーターを使った操縦シミュレーションも実施。過去の先輩パイロットからもご指導いただきました。
競技当日の天候は快晴でしたが、北北西からの風の影響でやや難易度が高い環境下での飛行となりました。当日は5時半過ぎから準備が始まり、あっという間に本学チームのフライトへ。本番ではトレーニングが効果を発揮し、体力的・精神的にも余裕を見せ、8566.72mという本学歴代2位の飛行に成功しました。およそ5km地点、ほぼ無風の状態で感じた、飛行機と一体になっているような独特な高揚感は忘れられません。
大学4年間はもちろんのこと、これまでの人生をふりかえっても、人力飛行機プロジェクトほど情熱を注いだものはありません。この原動力はどこからくるのか。それはやはり、鳥人間コンテストの本番当日、離陸前のプラットフォームに立った時のチーム皆で体感する高揚感、一体感が忘れられないからです。1年間をかけて一つの機体を皆で作り上げる。そうして作り上げた機体は、結局、最後は琵琶湖に落ちて壊れてしまうのですが、その一瞬のために、みんなが一生懸命、寝る時間も惜しんで全力を注ぐことができる。そんな素晴らしい挑戦をさせてくれることに感謝しかありません。
このプロジェクトに関わったことで、金属加工技術や飛行機の知識はもちろん、「あきらめない心」と「継続力」が大きく向上しました。いつまでにどれくらいの体力をつけるか、航空部でどの機体に乗れるようになるか、といった長いスパンでの目標設定やスケジュール管理ができるようになったことは大きな収穫です。
実はパイロットの選抜テストの際に機体を壊してしまうなど、失敗も多くありました。しかしその度にチームの仲間が支えてくれ、僕自身の夢にみんなの夢を重ね応援してくれました。かけがえのない仲間も、このプロジェクトで得られた宝です。
将来の夢は、航空会社にパイロットとして採用されること。どんな将来に進むことになっても、プロジェクトでの体験はこれからの僕の一生を支える糧になると信じています。
梅田の都市型高層キャンパス。
設備の整った環境で
ものづくりの技術と感性を磨く。
ロボティクス&デザイン工学部 空間デザイン学科 4年次
梅野 理菜さん
奈良県・奈良県立香芝高等学校 出身
高校1年の夏休みに6つの大学のオープンキャンパスに参加しました。その中で、私が好きな「ものづくり」を勉強できる環境が一番整っていると感じたのが大阪工業大学でした。ロボティクス&デザイン工学部がある梅田キャンパス(OIT梅田タワー)は、地上21階建ての都市型高層キャンパスです。合格した時は、こんな綺麗なキャンパスに通えることが嬉しくてワクワクしました。自宅通学の私にとって、JR、阪急、阪神、地下鉄の駅から徒歩数分というアクセスの良さも魅力。研究に熱中して帰る時間が遅くなっても、周辺は明るく人通りが多いので安心です。大阪で開催されるデザイン関連の展覧会やイベントには頻繁に足を運び、街なかのディスプレイや広告などのオシャレなデザインにも常にアンテナを張っていました。産学連携プロジェクトでは化粧品容器の提案や展示会用サンプルボックスの提案などに関わりましたが、積極的に企業を訪ねてディスカッションを重ねられたのも、梅田という便利な立地だからこそ。都市型キャンパスならではの刺激的な毎日を過ごしました。
自分が一番成長できたと感じる授業は、入学してすぐに受講した「設計製図演習」です。週1回3時間半かけてみっちり設計を学びました。図面の読み方や描き方といった製図の基礎知識を、手を動かしながら体に叩き込んでいきます。毎回ハードな課題が課され、オーバーワーク気味になりながらも必死に取り組んだおかげで、土台となる技術と締切意識が身につきました。1・2年次ではデザインの基礎を、それこそ手取り足取りで教えていただきました。しかし3年次になると授業の雰囲気は一転し、自分で考えて作り上げるという自主性重視の内容に。先生方のご指導も厳しくなって落ち込むこともありましたが、作品に対して真摯に向き合い、悩み考えながら取り組む根性が鍛えられました。もともと粘り強い性格でしたが、さらにパワーアップしたと感じます。
空間デザイン学科には建築・インテリア・情報・プロダクトの各コースの学生がいて、17階のデザインスタジオでそれぞれが自分の作品に取り組んでいます。オープンスペースなので交流がしやすく、アイデアや知識を持ち寄ってワイワイ話しながら制作する様子は、まるで毎日が学園祭前日のような楽しい雰囲気でした。梅田キャンパスには3Dプリンタが複数階に何台もあり、旋盤やレーザーカッターなどの精密機械も自由に使えるので、自分のアイデアを形にする方法が豊富にあるのも魅力です。
1年次の「プロダクト基礎演習」で“平面に折り目を入れると立体になる”ことに面白さを感じて以来、箱の世界に魅了されています。4年次にはインダストリアルデザイン研究室に所属し、「菓子類外箱の調査と袋菓子紙器化の提案」というテーマで、菓子パッケージにおける新しい紙器の構造設計のアプローチ法を研究。制作したマシュマロパッケージなど8作品は卒業制作展のプロダクト・情報部門で1位をいただき、大きな自信になりました。卒業後は、第一希望の大手パッケージメーカーに就職します。大学で紙器の設計にワクワクしながら取り組んだ経験を忘れずに、人々に喜ばれるパッケージのプロフェッショナルになりたいです。
高校生の頃と比較して成長したと思うのは、何に対しても意欲的になったことです。着想したらすぐに取り掛かるようになりました。計画を前倒しで進めると心に余裕ができて、良い作品作りに繋がったように感じます。自分は何よりも手を動かしてモノを作ることが好きなのだと実感した、充実の4年間でした。