
華氏451度
工学部 総合人間学系教室尾田 知子 先生推薦
突然ですが、英単語クイズです。firefighterの日本語訳は何でしょうか? 現実世界における正解はもちろん「消防士」ですね。本書の世界では、firefighter (fireman)の仕事は「火」を「消す」ことではありません。本書におけるfirefighter(fireman)は「昇火士」、つまり、本に向かって火炎放射し、「火」を立ち「昇」らせる職業を意味します。本の所持は大罪であり、万一見つかれば通報され、昇火士によって家ごと炎で焼かれます。本の主たる素材である紙が自然発火する温度が、本書のタイトル「華氏451度(≒摂氏233度)」となっています。
アンドロイドや模造動物、地球滅亡や火星への移住などのテーマが前面に出てくるような、ハードなSF小説は苦手…という人もご安心を。本書は約70年前に出版されたにもかかわらず、現代社会の科学技術と人間の関わりに生じている諸問題を予言していたかのような、先見の明のあるアメリカ屈指のSF小説です。けれども、舞台設定はそこまで近未来的すぎず(模造動物は若干登場しますが)、一貫して主人公の昇火士の目線から語られるストーリーも分かりやすいです。物語が進むにつれて、本に対する主人公の心境が変化していくさまが、読みやすい現代語の新訳であざやかに描かれています。そのような比較的「ソフトな」SF小説である本書を、ぜひ手に取ってみてください。そして、本書の小説世界同様、現実世界においてもなお、人々の心を惹きつけてやまない「紙の本」の魅力について、少しでも考えてみていただければ嬉しいです。
請求記号・資料ID
- 大宮本館
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