R-Centipedeモデルによる輪郭抽出とセグメンテーション
1.R-Centipedeモデル
R-Centipedeとは,2次元画像中から目的とする領域(オブジェクト)の輪郭抽出と セグメンテーションを行うためのモデルで,以下のような特徴を持つ.- 動的輪郭モデル(補足1)の一種である
- オブジェクトの境界判別にノードの「近傍領域」の簡易統計情報(平均,分散等)を利用する
- オブジェクトの形状に適応的なノードの追加・削除,輪郭の分化を行う(輪郭の再構成)
- 数値計算手法の応用により,演算の高速安定化,並列可能化が図られている
![]() | ![]() |
統計情報の利用 | 輪郭の再構成 |
---|
この特徴により,ノイズとなる背景の模様に頑強で,オブジェクトの形状や個数の変化にも対応した安定的な輪郭抽出が可能となり,トモグラフィーデータのような大量な画像ファイルからの連続した輪郭抽出が容易になる.
2.Demonstration images and movies
R-Centipedeを実装したプログラムを作成し,実際の電子顕微鏡像に,輪郭抽出を適用した際の輪郭抽出の過程は次のようになる.いずれも初期輪郭は画像の辺縁部に配置し,パラメータも共通としている.球状模型 ※検出は実時間 (画像サイズ:498x499[pix]) |
緑藻の一種 ※検出は実時間 (画像サイズ:984x1114[pix]) |
---|
補足1) 動的輪郭モデル
動的輪郭モデルとは,隣接する2つの領域の境界線(=輪郭)を抽出する手法で,- 輪郭は,離散化した頂点(ノード群)として表現される
- 輪郭は,輪郭自体の持つ変形エネルギーと外部(画像)から受けるエネルギーにより変形し,
エネルギー関数の最小安定解(変形が収束する解) = オブジェクトの輪郭
とする
代表例として,Snake(M.Kass,A.Witkin,D.Terzo, 1988)やLevel Set Method(S.Osher,J.A.Sethian,1999)などがある.
HawkCの概要と利用事例
1.HawkC -R-Centipedeアルゴリズムを実装した,3次元画像の自動・高速処理を目指す立体像可視化ソフトウェア
HawkCは,『科学技術振興機構(JST) 研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)』において,大阪大学,大阪工業大学,(株)ダイナコムの共同研究グループ(代表者 大阪大学 御堂義博)により開発,普及促進が図られている,3次元画像の自動・高速処理を目指す立体像可視化ソフトウェアで,現在,β評価版の提供が行われている(2014/06).HawkCの主たる輪郭抽出機能にはR-Centipedeが採用されており,トモグラフィーデータから連続的な輪郭の抽出,さらにHawkCの3次元描画編集機能により,輪郭抽出結果からの立体像の再構成も可能である.その他,立体像の再構成に用いたデータをエクスポートすることで3Dプリンタによる造形にも適用が可能である.
以下に,HawkCを利用した結果のサンプルを紹介する.
[球状模型] 154枚の画像の輪郭抽出に180秒 (汎用ラップトップPC利用の場合) ゴミの削除修正後,3Dプリンタで出力 |
![]() |
|
---|---|---|
[緑藻] 175枚の画像の輪郭抽出(外郭)に660秒 (汎用ラップトップPCの場合) ゴミの削除修正後,3Dプリンタで出力 ※内部構造はパラメータを変更して抽出 |
![]() |
|
[ヒトの骨のX線CT像] ※各スライスの輪郭抽出結果と その積層状況の確認動画 |
![]() |
熱融解型3Dプリンターを用いた成型に関する検討
HawkCから輪郭の頂点データをエクスポートすることで,3Dプリンタで印刷可能なデータを生成することが可能である.
HawkCからエクスポートしたデータを,近年低価格帯のモデルが提供されている熱融解型の3Dプリンタなどを用いて造形することで,必要なデータや造形手法,使用デバイスとの組み合わせなどの観点から,より効果的な可視化と三次元再構成の有効的な活用方法について検討を行っている.
[緑藻] ※HawkCで抽出した輪郭を元に 再構成した外郭の構造と内部の 構造をそれぞれ造形し,接合したモデル |
![]() |
---|