カリキュラムの基軸となるPBL

最近の大学教育では、学生が“自主的”かつ“協働”して活動するなかで“実用的”な能力を高める学修形態が、これまで以上に重視されています。PBL「課題解決型学習」(ProblemあるいはProject-Based Learning)は、その代表的手法として、世界的に多くの大学で導入が進みつつあります。
OIT工学部では、その動きをさらに進めて、入学初年度に学生全員がPBL型授業を履修するカリキュラムを整えました。そこでの基礎体験は、高年次で提供される発展的なPBL型授業や演習・実験型の専門科目、さらには卒業研究や大学院進学後の研究にも活かされます。あるいは、グローバル人材への一歩となる「国際PBL」参加への動機づけともなります。
単に一つの授業というだけでなく、大学での学修活動全般の基軸として、工学的創造に向けての豊かな構想力と実践力を学生に提供する。それが、OIT工学部のPBLです。
「1+1=2+α」の最大化をめざして

PBLはグループでの取り組みです。設定された課題に対して、4~5人程度でチームを組み、協働で解決をめざします。
たとえば、5m角のキュービック(実際に用いるのはその1/10の模型)に所定の条件の開口部を設け、「読書用スペースとして快適な採光と通気性を工夫する」という課題。そこには“設計”や“強度の計算”、また“内部環境の解析”や実際に模型を“加工”するなど、さまざまな作業が含まれます。これらを個々のメンバーに割り振るのではなく、チーム全員で議論しながら、互いの意見・プランを修正・改良し、最終的に模型を完成させる。それによって得られるのは、いわば「1+1=2」ではなく、「1+1=2+α」の成果です。この「+α」をいかに最大化するか。競争が激しい現実社会で求められるのは、まさにその実践力です。
未来につながるコミュニケーション力

社会が求める工学的実践力獲得への大きな鍵は、コミュニケーション力です。実験や開発、あるいは工事など、現実の工学・科学諸分野の活動の多くは、しばしばチーム単位で営まれます。そして、チーム中でのコミュニケーションの密度が、成果に直結するケースもしばしばです。
OIT工学部のPBLでは、設定された課題について、学生個々のアイデアをまずグループ内で検討し、より良い案を選定します。その後、各グループの案をクラス全体でプレゼンテーションし、グループ外の学生からの意見や教員のアドバイスも反映させながら、その案をさらに深化させます。そして実際に実験・制作を行う過程や、途中での試行錯誤、最終成果物のクラスでの発表などを通して、さらなる意見交換が行われます。なかには複数の学科所属学生の混成グループによる課題挑戦もあり、初対面のメンバーと一から関係を紡ぐなど、現実社会でも起こりうるさまざまな機会を疑似体験しながら、コミュニケーション能力が鍛えられるのです。
学生と教員が一体となった達成感

「効率の良い浄水処理」「化学発光」の方法考案や、「橋梁モデル」「ダンボール椅子」「電池自動車」の制作など、OIT工学部PBL型授業での課題は、幅広い工学諸分野での研究・教育を担っている教員集団の特長がそのまま反映されています。
ただし、課題は異なるとしても、教員の役割は一つです。それは、“ファシリテーター”(facilitator)に徹すること。課題設定のしかたや、授業プロセスの策定、アドバイスの与え方など、“裏方”としての役割を徹底的に極めることで、“主役”となる学生の自律的な活動を促し、その潜在力を存分に導きだす。PBL型授業の成功には、こうした教員サイドの献身も不可欠な要素です。
学生同士だけでなく、学生と教員それぞれの役割と取り組みが有機的に絡み合う学修形態で、これまでにない達成感を味わいながら、工学的センスが身につく授業。それが、OIT工学部PBLの理想です。