内容
ADM形式を変形することが,数値安定性をもたらす,といろいろ報告されている.ここでは,Maxwell方程式を用いて,同様の実験ができることを示す.BSSNの利点として考えられているように,拘束条件式を加えることが,数値的安定性を変える,という実例を示した.
評
「Maxwell方程式を使って,拘束条件付きのダイナミクスの数値計算比較を行えばよい」という
主張は,残念ながら,新しいものではない.すでに,
G. Yoneda and H. Shinkai
Class. Quant. Grav. 18 (2001) 441 - 462
の中の3.2章とAppendix Bにて,同種の実験が行われ,なぜ安定性が変わるのかの説明まで行われている.
この私のメールに対し,著者も同意,謝罪のメールを送ってきた.
1ページ目のThe first term...の段落で,「(5)式の初めの項だけなら,(3)(4)はwave propagationだが,(5)式一行目の他の項があるために,数値的不安定性が起こる.それを(7)のように変形するのがBSSNのポイントの一つ.」と誇らしげに書いているが,これは,中村他が昔から主張している事実のリピート.
背景
著者のBonaは,Bona-Masso双曲形式を提案した本人である.数値流体力学で使われているRiemann問題(弱解を許す双曲形式)に早くから注目し,その数値相対論版を目指して,双曲形式の利用を92年に提案した.
内容
多くのhyperbolic形式が提案され,Cornell groupのKST形式のように,いくつかは未知パラメータを多く含む形式もある.物理的には,重力波に対応した2つのモードが光速で移動するような固有値をもつシステムが正しいシステムである.この考え方は,hyperbolic形式の優劣を決める上でベンチマークとなるだろう.事実,KST形式のパラメータも,この点からある種制限されることになろう.
例として,Bona-Masso形式の簡略版を作り,momentum constraintの加え方によって固有値が変わることを例示[(25)式].また,2+1次元でも同様なことを議論.
評
主張している点は,別に新しいことではない.hyperbolic形式を作る人は,固有値が光速を表すべきことは「目指すべき事実」であり,KST形式のパラメータ制限もそうあるべきである.敢えて論文にして,主張すべきことではない.Brief ReviewかLetter程度なら可.拘束条件の破れを解析することについては,言及なし.
背景
preprint版(gr-qc/0102027)から1年近く経って,ようやくpublishされた.
内容
数値相対論に於ける不安定性の発生原因についてはまだ定かではない.ここでは,球対称時空,
Eddington-Finkelstein座標に限るが,symmetric hyperbolicな発展方程式を作り,
それが数値的にも長時間積分に耐えうることを示す.
評
著者らも認めているが,これは,非常に特定な状況に話を限ったもので,3次元化などその他の汎用性は全くない.