大阪工業大学 情報科学部 宇宙物理研究室 2008年度 卒業研究
「重力レンズ効果を想定した回転ブラックホールの周りの粒子の軌道」
情報科学科 氏名 入江 庄一
2009/2/18 作成
概要 / 目次 / 卒業論文/
概要
重力レンズ効果とは、 重力によって光の軌道が曲げられる現象である。 これは、 1916年にアインシュタインが一般相対性理論で予言し、 1919年にエディントンによって観測された。 その結果がアインシュタインの理論とほぼ一致したので、 一般相対性理論が正しいことを示した最初の観測となった。本研究では、 (1)ニュートンの運動方程式、 (2)シュバルツシルト計量における粒子の方程式、 (3)カー計量における粒子の方程式を解くことによって、 重力レンズ効果を想定した回転するブラックホールの周りの粒子の軌道を計算した。 シュバルツシルト計量は、 回転しないブラックホールを表わす計量であり、 カー計量は、 回転するブラックホールを表わす計量である。 C言語を用いて、 常微分方程式をRunge-Kutta法で解いた。
図1に、 ニュートンの運動方程式を用いた粒子の軌道を示す。 エネルギーを共通にして最近接距離を変えてプロットした。 粒子がブラックホールから遠い位置を通る軌道は、 近い位置を通る軌道より曲がる角度が小さくなることが分かる。
図2に、 シュバルツシルト計量で、 粒子の角運動量を変化させたときの軌道の変化を示した。 角運動量が大きくなるにつれて、 粒子の軌道の変化が小さくなることが分かる。 また、 ブラックホールを1周して反対側に粒子が飛び出す場合があることも分かる。
図3に、 カー計量で、 粒子の角運動量を変化させたときの軌道の変化を示した。 図は、 ブラックホールが反時計回りに最大回転している時である。 粒子の軌道が反時計回りに変化することが分かる。 図より、 重力レンズ効果による光の軌道は、 ブラックホールが回転している場合は、 観測時に左右対称にならない。 また、 ブラックホールが鏡のような役割を果たして、 光が戻ってくる軌道がある。 現実に、 詳細な天文観測が行われると、 このような軌道解析は重要になると考えられる。
目次
- 序論
1.1 背景
1.2 本研究の目的・概要
1.3 本論文の構成
- ブラックホール時空での粒子の運動と光の軌跡
2.1 ニュートン力学での運動
2.2 シュバルツシルト計量
2.3 シュバルツシルト時空での粒子の運動
2.4 重力による光線の折れ曲がり
2.5 光の曲がる角度
2.6 カー計量
- シュバルツシルト計量での重力レンズ効果
3.1 Runge-Kutta法
3.2 ニュートン力学での粒子の軌道
3.3 粒子の曲がる角度の計算
3.4 シュバルツシルト計量での粒子の軌道の計算
3.5 シュバルツシルト・ブラックホールでの重力レンズ効果
- カー計量での重力レンズ効果
4.1 カー計量での粒子の軌道の計算
4.2 カー・ブラックホールでの重力レンズ効果
- まとめ・結論
卒業論文
卒業論文(pdf)
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