大阪工業大学 情報科学部 宇宙物理研究室 2010年度 卒業研究
インフルエンザの感染力とワクチン配分の最適化
学籍番号B07-028 情報システム学科 名前 熊谷 紘甫
2011/2/17 作成
概要 / 目次
概要
2009年4月に新型インフルエンザが日本でも流行をはじめ、ワクチン生産量や配分(新型と季節性の生産比)が重要な問題として浮上した。本研究では、西浦-合原モデル〔生産研究(2009)797-803〕の計算を追試し、さらに拡張したモデルのシミュレーション結果を報告する。 西浦-合原モデルでは、新型と季節性の2つのインフルエンザの流行を考え、それぞれに対応するワクチンの配分比をもとに、インフルエンザによる死亡者数が最小となる状況を求めている。しかし、感染はどちらか1つのインフルエンザとしており、また、ワクチン接種の時期は流行前に一斉にできるとしている。本研究では、1つの同じシーズンで両方のインフルエンザに感染する可能性を考え、さらにワクチンを開発・製造する時間を考え、 接種可能な時刻で複数回に分けるモデルに拡張した。図1、2は1つのシーズンで両方のインフルエンザに感染する(2次感染)可能性がある時の死亡者数である。図1は、流行前に一斉にワクチン接種、図2は、複数回に分けてワクチン接種する場合である。後者は、ワクチンを10等分し30日刻みで接種させるものとした。接種開始は流行開始から開発期間(30日)+製造期間(1クール30日)を考え、60日後とした。また、ワクチン接種の効果が現れるまでの期間(5日)も考慮している。 横軸は新型インフルエンザにあてるワクチン比率である。縦軸は2つのインフルエンザによる死亡者数の合計である。2次感染ありの場合、死亡者数が合計で約7554万人となる。西浦-合原モデルで出ていた最適化が二次感染モデルでも最大誤差3.2%以内の範囲であることから、モデルを複雑にしても最適解はあまり変わらないことがわかった。ワクチンを複数回に分け接種した場合は、すべてのワクチンを新型インフルエンザ用にしたほうがよい結果となった。西浦-合原モデルでも本研究でも流行前接種の場合は最適なワクチン配分は新型に62.5%,62.6%で死亡者数が3人となった。以上より流行前の9000万人分のワクチンを用意することができれば、 インフルエンザの流行を抑えられることができると結論する。
図1.ワクチン配分と死亡者数(流行前接種) 図2.ワクチン配分と死亡者数(複数回接種)
目次
- 序論
1.1 背景
1.2 本研究の内容
1.3 本論文の構成
- インフルエンザ流行の数理モデル
2.1 西浦-合原によるインフルエンザ流行モデル
2.2 西浦-合原によるインフルエンザ流行モデルのパラメータ基本設定
2.3 Runge-Kutta法
- 西浦-合原によるインフルエンザモデル
3.1 インフルエンザ感染者時間変化
3.2 インフルエンザ死亡者数の時間変化
3.3 新型インフルエンザ感染率の変化
3.4 ワクチン接種をした場合のワクチン比率と死者数
3.5 ワクチン比率と配分変化の死亡者数
- 改良インフルエンザ
4.1 ワクチン複数回接種
4.2 二次感染ありでのインフル流行モデル設定
4.3 二次感染ありでのインフル流行モデル
4.3.1 二次感染ありでのインフルエンザ一次感染者の時間変化
4.3.2 二次感染ありでのインフルエンザ二次感染者の時間変化
4.3.3 二次感染ありでのインフルエンザ感染者の時間変化
4.3.4 二次感染ありでの死亡者数の時間変化
- 二次感染ありでのワクチン接種インフルエンザモデル
5.1 二次感染ありでの流行前ワクチン接種インフルエンザ流行モデル
5.2 二次感染ありでのワクチン複数回接種インフルエンザ流行モデル
- まとめ
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