大阪工業大学 情報科学部 宇宙物理・数理科学研究室 2014年度 卒業研究
ブラックホールの重力場の影響を受けたガス雲の運動
情報システム学科 松本勇輝
2015/3/3 作成
概要 / 目次 / 卒業論文、シミュレーション動画
概要
天の川銀河の中心にあるブラックホールに接近するG2と呼ばれるガス雲を、Newton重力でシミュレーションした先行研究がある。 本研究では、Newton重力と相対論でのシミュレーション結果を比較し、ブラックホール周辺を運動するガス雲が、 どのように変形するかを比較した。相対論計算は、Pseudo-Newtonianポテンシャルを用いてカー時空の回転パラメータの影響を調べた。図1は、ブラックホール周辺を運動するガス雲のブラックホールからの平均距離を各モデルで比較したものである。 図1より、Newton重力の場合と相対論効果が入った振る舞いは全く異なり、またブラックホールの回転の大きさにも依存することが分かる。 相対論ポテンシャルでは、ブラックホールの回転がないとすべての粒子が吸い込まれてしまうが、 最大回転では8割ほどが残って降着円盤を形成する(図2)。
図1 BHとガス雲の平均距離
図2 カー時空(a=M)のガス雲の分布(t/M=1000)
a:カーパラメータ(0≦a≦M), M:ブラックホールの質量
以上のシミュレーション結果から、 ガス雲が形成する降着円盤の存在や、その密度分布から、 ブラックホールの回転パラメータを区別できることが分かった。
Newton重力と相対論を比較したシミュレーション動画はこちら
目次
- 序論
- 背景
- 本研究の目的
- 本研究の構成
- 時空の概念
- シュバルツシルト時空
- カー時空
- 粒子の軌跡のシミュレーション方法
- 一般論
- 方法論
- 円運動によるプログラムテスト
- Pseudo-Newtonianポテンシャル
- Paczynski-Wittaポテンシャル
- ポテンシャルの比較
- Mukhopadgyayポテンシャル
- カーパラメータ変更による力の比較
- SPH法による3次元流体シミュレーション
- 物理量の表現
- 流体力学の方程式
- ガス雲の運動シミュレーション
- ブラックホール周辺を運動するガス雲のシミュレーション
- Newton重力とシュバルツシルト時空の比較
- カー時空によるガス雲の運動
- ガス雲に与える回転パラメータの影響
- 空間自由度2次元と3次元の比較
- ガス雲の円運動のよる降着円盤形成過程
- まとめ
卒業論文
卒業論文 シミュレーション動画