大阪工業大学 情報科学部 宇宙物理・数理科学研究室 2015年度 卒業研究
「スイングバイを行う惑星探査機軌道の再現」
情報システム学科 上杉耕玄
2016/2/29 作成
概要 / 目次 /
概要
スイングバイとは,惑星の万有引力と公転運動を利用して惑星探査機(以下探査機)の運動方向を変更し,加速・減速する技術である.本研究は,太陽系の惑星シミュレータを作成し,そこで探査機も動かすことで,実際の探査機のデータと比較した.本研究では1972年3月3日に打ち上げられ,1973年12月4日に木星とスイングバイをしたパイオニア10号のデータを用いた.図1は,探査機の初期データを打ち上げの1ヶ月後(※1),6ヶ月後(※2),スイングバイの10日前(※3)としたときの軌道である.※1では,探査機が木星の公転方向の前を通り,減速したため太陽系を脱出せず,※2ではスイングバイに3日の差異があり,後の軌道が実際のデータから外れた.※3は実際の軌道との差はほとんど見られない.これらの原因は探査機自体が,目的地に正確に辿り着くように燃料を使って軌道コントロールがされているからだと考えられる.
図1 パイオニア10号の軌道(軸は天文単位)
スイングバイのための軌道コントロールにどれ程精度を要求されるかについても考えた.表1は※3の初期速度の方向をわずかに内向きに傾けたときの軌道との差異を示す.おおよそであるが,角度を10分の1にすると※3のデータとの差異も10分の1になっている.また,1度傾くだけで5年後には,地球の約2314周分(地球1周約40,000km)の差異になる.
表1 ※3の初期速度を傾けたときの軌道の差異(km)
目次
- 序論
- 背景
- 本研究の目的
- 本論文の構成
- 万有引力の法則
- 万有引力について
- ルンゲクッタ法
- ケプラーの法則
- スイングバイ
- 加速スイングバイと減速スイングバイ
- パイオニア10号について
- 太陽系の惑星シミュレータの作成
- 初期条件の設定
- 精度・コードチェック
- パイオニア10号の軌道シミュレーション
- 実際の軌道との比較
- 1972年4月4日(打ち上げ1ヶ月後)
- 1972年9月4日(打ち上げ6ヶ月後)
- 1973年6月4日(最接近日の6ヶ月前)
- 木星に最接近した日付を比較
- 初期速度の角度をずらした場合
- パイオニア・アノマリーについて
- 結論
- 付録
卒業論文
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