大阪工業大学 情報科学部 宇宙物理・数理科学研究室 2023年度 卒業研究
極光帯に対する季節・太陽フレアの影響
ネットワークデザイン学科 阿部晴斗
2024/2/17 作成
概要 / 目次 /
概要
オーロラの出現する確率が高い領域を極光帯と呼ぶ.本研究は,オーロラがどの緯度で見られるかを調べるため,太陽から打ち出された荷電粒子の,地球磁場による軌跡をシミュレーションした.磁場は文献[1]にある双極子の関数形を設定した.粒子は,磁場からLorentz力のみを受けるものとして,運動方程式をRunge-Kutta法で解いた.
図1は,荷電粒子(陽子)が地球に飛来した時の軌跡である.地球の位置を原点とし,地球の半径を1とした単位でプロットしてある.初期条件はx=-40で与え,初速は光速の10%とした.地軸はxz面で23.4度傾いていて,北半球では冬に相当する.多くの粒子はLorentz力により地球に入り込めないことがわかる.そこで,初期の打ち出し位置を細かくして,地球表面近くに到達するものを探した.図2は,地球半径の0.1倍ごとに荷電粒子を打ち出したときのもので,地球の表面300kmまで到達できた52個の荷電粒子の軌跡である.この場合,オーロラは北緯76度,南緯81度付近で見られることになる.南北両半球でオーロラが同時に観測できるという共役性を再現している.
さらに,春と秋に相当する状況を考え,荷電粒子の地球に入り込む緯度にどのような変化が生じるかを検証した.北半球が秋のとき,光速の10%で飛ばすと北緯78度の地点で見られた.すなわち,季節のちがいによる緯度の変化はほぼ見られなかった.図1 多くの荷電粒子は地球磁場で散乱する 図2 地球表面に到達する荷電粒子の軌跡の例
また,太陽フレアにより粒子のエネルギーが増加したときを想定して光速の20%で飛ばすと北緯71度の地点で見られた.すなわち,フレアに対応して,粒子の初速度を増加させると,到達する緯度が下がることが確認できた.このことは,歴史上,太陽活動が活発なときは,低緯度地帯でオーロラが観測された事実と一致する.
シミュレーション結果から,地球磁場により多くの荷電粒子が跳ね返されること,高緯度地域では入り込むものがあること,粒子のエネルギーが高いほど到達する緯度が下がることがわかった.極光帯は,荷電粒子のエネルギーと地球磁場の関係に基づいて形成されることを示した.[1] F.D. Stacey, P. M. Davis 著,本多了ほか訳『地球の物理学事典』(朝倉書店,2013)
目次
- 序論
- 背景
- 本研究の目的
- 本論文の構成
- オーロラの発生原理について
- オーロラ
- 磁気圏
- 太陽風
- 太陽フレア
- Runge-Kutta法によるオーロラのシミュレーション
- 磁場中での荷電粒子の運動
- 地球の磁場の形状
- 経緯度の計算
- 地球の季節
- プログラムの検証
- 初期条件の検討
- 共役性
- 季節変動
- 太陽フレア
- まとめ