大阪工業大学 情報科学部 宇宙物理・数理科学研究室 2023年度 卒業研究
SPH法による飛行機の揚力計算
情報システム学科 小川元基
2024/2/24 作成
概要 / 目次 /
概要
本研究では、飛行機に生じる揚力が翼の角度や形状によってどう変化するのかを、SPH法(Smoothed Particle Hydrodynamics)を用いて解析した。SPH法とは、流体を粒子の運動に置き換えて追跡する方法で、グリッド法よりも境界の取り扱いが容易になる。
本シミュレーションでは、翼の断面がかまぼこ型とくさび型となる2種を設定し、空気に見立てた多数の粒子を、角度を変えて衝突させた。そして、翼の下部と上部付近での圧力差(揚力)を比較した。そこで、下部での圧力が、上部での圧力より高くなっていたならば、ベルヌーイの定理により、揚力が発生しているということが出来る。
図1, 2で、1600個の粒子が2種類の翼へ衝突する様子を示している。両図とも離陸時を想定して、15度の角度をつけた状態で粒子を打ち出したときのものである。![]()
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図1 かまぼこ型への粒子の衝突 図2 くさび型への粒子の衝突
図3は、粒子を衝突させてから、最後列の粒子が翼に到達した瞬間での、揚力ベクトルの比較である。両方の翼で、揚力ベクトルが上向きになっているので、上向きに揚力が発生していることが分かる。![]()
図3 圧力ベクトル
図は2つの形状の翼に対し、0°, 15°の角度から、30km/h, 150km/h, 300km/hの流体速度中での揚力ベクトルを表している。どちらの翼も速度を上げることで、揚力ベクトルが増加する。離陸及び水平飛行の時に適しているのは『くさび型』といえる。
現実には渦の形成による圧力差が影響することになるが、今回の計算では取り入れていない。しかし、速度・角度の違いが揚力に及ぼす傾向は正しいと考えられる。
目次
- はじめに
- 背景
- 本研究の目的
- 先行研究の紹介
- 本論文の構成
- 揚力発生のメカニズム
- ベルヌーイの定理
- 翼周りにできる渦(循環)
- ケルビンの循環定理
- クッタ条件
- 揚力を発生させる翼の断面
- 翼の形状と力積
- 粒子の衝突による翼が受ける力積
- 抵抗力の結果
- 計算に用いた手法
- SPH法
- Runge-Kutta法
- SPH法による粒子の移動と圧力ベクトル
- 壁への衝突
- 翼への衝突
- 揚力ベクトルの計算
- 揚力ベクトルの結果と考察
- まとめ
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