真貝寿明 reviews:
TGG 10周年
reviewed on 2001年9月12日
on the regular journal ...
Matter of Gravity -- Anniversary edition --
Editor: Jorge Pullin
gr-qc/0109034
背景
これは半年に一回発行されている,アメリカ物理学会の
重力物理グループ(Topical Group of Gravitation) の
機関誌である.
TGGに入会するには,アメリカ物理学会のメンバーとなり,さらに年会費
5ドルを納めればよい.時折電子メールで,研究会や公募情報が送られてくる.
今回は,TGG設立10周年を記念して,通常の会議報告とは別に,この10年を振り返るエッセイが
いくつか載っているのでここで紹介しよう.
内容
- TGG 10周年 by B. Berger
これは彼女がTGGを設立した際の思い出と現在まで順調・健全にコミュニティーが
成長していることの回顧録である.
- 重力波検出の10年 by P. Saulson
ちょうどLIGO (Laser Interferometer for Gravitational Wave Observatory)
の計画が認められてスタートしてから10年に相当する.本当に認められたとき,「くそ,これからは
きちんと動かすようにしなくちゃいけない」と正直思ったとか.現在ほとんど機器の設置が終了し,
いよいよこれから観測,という重力波干渉計建設に関わる回想である.
- 一般相対性理論の10年 by C. Rovelli
この10年で相対論が多大な進展をして,理論物理の大きな柱になったことを評価しながらも,
今後起こりうる最悪の事態(もし重力波が実際に検証されなかったとき・数値相対論が格子QCDの
ように存分に成果を挙げられなかったとき・ループ量子重力が本当の理論ではなかったとき・・・)にも
対処しうる心構えの必要性を説いている.後半は,一般相対論がもたらした新しい時空概念を我々がまだ
本当に理解し得ていないこと,熱力学・統計力学・量子力学の相対論との融合問題などに簡単に触れる.
- テーブル上の重力実験 by J. Gundlach
1986年に始まった第5の力騒動は数年で鎮火したが,等価原理の検証実験の重要性はその後も高い.
現在進行中の等価原理実験,短距離でのr逆二乗法則の有効性実験,重力定数Gの決定実験の3つについて,
文献付きで簡単に紹介.
- ストリング理論 by G. Horowitz
10年前にはストリング理論は量子重力に対する「摂動的で背景時空に依存する」アプローチであると
分類されていたが,現在では少なくとも時空にある種の漸近的条件を課せば「非摂動的で背景時空に
依存しない」理論足りうるものになっている.この10年間で新たに判明した事実は,ストリング理論では
ストリングだけではなく,より高次元な物体(ブレーン)も基本的な要素であること,そしてブレーンを
使うことにより5種類の摂動論的なストリング理論が「M理論」(Mが何を意味するかは合意が得られて
いない)と呼ばれる一つの理論の異なる極限であったこと,てストリングの状態数・輻射
を計算することによるブラックホールのエントロピー・ホーキング輻射の再現,そして
続くAdS/CFT同一性仮説の登場,である.
評
いずれも読みやすく短く要領を得たレビューであった.
Matter of Gravityは,登場当初からJorge Pullin氏がeditorとなっている.Pullin氏の
あまりに多彩な活動故,私は「ホルヘプリン複数説」を持っていたのが,Penn Stateでの
1年以上の観測の結果,やはり一人であるとの結論に達した.
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