ものづくりの面白さに目覚め進路を変更
私が担当している仕事は、業務用エアコンの室外機の構造設計です。ものづくりがしたくてこの仕事に就きましたが、高校生のころは数学の教師になりたいと思っていました。大阪工業大学のロボット工学科へ進学を決めたのは、教師になるにしても知識の幅を広げたいと思ったからです。
印象に残っている科目は、多くの先生の専門分野をローテーションで学べる「ロボット工学実験」です。特に、小林裕之先生の実験は面白かったです。課題は、市販の小さなロボットのシステムを自分の思い通りに動くよう変更すること。直進しかできないものを曲がれるように変えたり、壁に当たるとLEDが光る機能をつけたり、といろいろ工夫を凝らしました。また、基板をつくって、自分の心拍数を測ったこともあります。そうした演習の影響を受け、2年次の時にはすでに、ものづくりの世界へ進もうと決めていました。
卒業研究と並行して将来に役立つ技術を学ぶ
3年次からは、小林先生の「知能ロボット研究室」(現:ロボティクス&デザイン工学部システムデザイン工学科「知能ロボティクス研究室」)に所属し、荷物を運ぶ1本脚のロボットの開発に取り組みました。大きな荷物に複数の1本脚ロボットをセットし、それぞれが周りの環境を認識して動けば、段差のある場所でも、複数の人間の力で運ぶのと同じように荷物を運ぶことができると考えたからです。当初は、実際にロボットを製作するつもりでしたが、プログラミングに夢中になり、途中からはソフト開発をテーマとして研究に取り組むことにしました。
しかし、卒業後は構造設計の分野に進みたいと考えていたので、廣井富先生には就職後に必要となる3DCADの操作方法を教わり、使いこなせるようになりました。新構造を提案しようと試行錯誤をしていた時には、「身近な製品にヒントがある」と助言をいただき、工具箱のスライド式トレーから着想を得て新形状を発案したこともありました。就職活動では、会社に合わせたアピールをすることができました。
※「知能ロボティクス研究室」はロボティクスデザイン&デザイン工学部システムデザイン工学科にあります。
大学での学びが仕事に直結
三菱電機エンジニアリング株式会社に就職を決めたのは、生活に身近な家電をつくりたいと思ったからです。現在、担当している業務用エアコンの構造設計では、やりがいを持って仕事に取り組んでいます。また、街中で担当機種を見かけると、「社会に役立つものをつくっている」と誇りを感じます。
大学で身に付けた知識や技術が生きていると感じることは多く、特に構造設計をする際は、卒業研究と並行して身に付けた3DCADの操作技術が役立っています。また、在学中には電気についても学べたおかげで、電気回路を担当する部署と専門用語を交えたやり取りもスムーズです。
大学では、実験や演習のたびにレポートを作成しましたが、その経験も社会で役立っています。会議ではよく、設計に至った経緯を記したエビデンス(報告書)を求められますが、大学でも実験内容や方法、得られた結果、結果からどう考えたのか、といったことをレポートにまとめていました。どれも基本的な項目ですが、それこそが、社会人には重要なファクターとなります。大学での4年間、真剣に取り組んだ結果が出ました。
多くの製品を任されるエンジニアをめざして
入社2年目から現在の業務を任されており、量産が始まると工場に行き、不具合がないかチェックしたり、作業者の方々には組み立てやすさなどの意見をうかがっています。工場で自分が設計した部品や製品がつくられていく様子を見ると達成感とやりがいを感じますが、次の開発にどう生かせるのかを考え、気持ちを切り替えています。
今の夢は、業務用エアコンのエキスパートになることです。そして、一人前のエンジニアに成長し、より多くの機種、製品を任されるようになりたいと考えています。
大阪工業大学には、さまざまな専門分野の先生がいらっしゃいます。幅広く学び、自分のやりたいことを見つけてください。
-
卒業研究で取り組んだ1本脚ロボット。運びたい物に1本脚ロボットを複数取り付け、どのような動きができるのかをシミュレーションした。 -
シミュレーションの結果をもとに、ロボット本体をデザイン。段差や階段などもスムーズに進めるよう、関節を設けた。 -
モノラボで試作した1本脚ロボット。「アイデアを形にできる施設が充実しているのも大阪工業大学の魅力」と秦さん。 -
■三菱電機エンジニアリング株式会社/優れた技術力と全国規模のネットワークで社会と暮らしに貢献する総合エンジニアリング企業。技術パートナー企業として、三菱電機株式会社向けに構造・機能・生産等の開発設計を行う。また、さまざまな業務で培った技術に加え、最新の技術と設備を取り入れ、市場ニーズに応えるソリューションや機器を提供している