アインシュタインの相対性理論により、時間・空間・物質は互いに影響を及ぼしているとされた。この視点は現在の観測結果と矛盾していない。しかしながら、我々はこの世界が何故「時間は1つ」「空間は3方向」「物質はクォークとレプトン(とヒッグス)」「力は4種」で構成されているのかをいまだ説明できていない。
物質の根源は大きさを持たない点粒子ではなく、プランクスケール程度(10−35メートル!)に拡がった弦だとすれば、時間・空間・物質・力すべてを「弦の振動モード」という単純な記述で表現できるのではないか、さらには困難とされた「一般相対論と量子論の融合」が可能になるのではないか、と期待されるようになった。これを超弦理論という。実際、20世紀終盤から21世紀にかけ超弦理論は大きく発展した。
弦の運動を理論的に調査すると、アインシュタインの一般相対論などでは見えなかった時空構造の「双対性」が発現する。右上図にあるように、半径 のシリンダー状の時空上を伝搬する弦の質量スペクトルと、半径 のシリンダー状の時空に巻き付く弦の質量スペクトルは等価である。これを「T-双対性」と呼ぶ。
私の研究室ではこのT-双対性を内蔵する時空構造の解明と応用に取り組んでいる。例えばある特殊な物体の周囲を一巡すると一般座標変換と同時にT-双対性が施された時空構造(T-fold)が超弦理論では自然に登場する。T-fold 上の物理現象はまだまだ未解明なものが多く、今後の進展で明らかにしたい研究内容である。
木村 哲士 教授 (キムラ テツジ)
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