あるミュージシャンが、「音楽は役に立たない。役に立たないから素晴らしい。役に立たないものが存在できない世界は恐ろしい」という言葉を綴っています。2011年のTOWER RECORDSのポスターに書かれた言葉です。
大学生の期間は”モラトリアム（猶予期間）”とも呼ばれ、心理学的には社会的な責任を猶予された中で、自分自身と向き合い、アイデンティティの確立という自己課題に取り組む時期であると言われてきました。
しかし、現在の学生の皆さんの話を聞いていると、そんな余裕はあるのだろうか、と思わされることがあります。限られた時間の中で将来を見据えて、すべきことや役に立つことをしなければならない。そんな焦りやプレッシャーがあるのかもしれません。
役に立つことは確かに大事なことですが、そればかりを追い求めると息が詰まるような気がします。
音楽を聴くのも、必ずしも何かのためではありません。音楽を仕事にしたい！歌や楽器が上手くなりたい！という人ももちろんいますが、ただ好きで、ただ聴きたいからという人も多いのではないでしょうか。そして、そういうことが息抜きになったり、人生の彩りになったりするのだと思います。
コロナ禍の状況ではなかなか自由にとはいきませんが、息苦しく感じたとき、やるべきことばかりで疲れたと感じたとき、役に立たないことをして、気分転換をしてみてください。
余談ですが、僕の好きな役に立たないことは、文房具集めです。何か作品をつくるわけではないのですが、色々な色を眺めるのが好きで集めています。いつか何かを描く日が来るかもしれないですし、何も描かないかもしれません。
あなたの好きなことはなんですか？将来役に立っても、立たなくても。

学生相談室カウンセラー　兵頭 俊宏