大阪工業大学

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研究室VOICE 三題噺:物理、教育、コンピュータ

情報科学部

Profile

情報科学部情報知能学科

藤井 研一教授

計測およびシミュレーション物理研究室

波動方程式のシミュレーション
物理は現代社会の礎である工学の基礎を形作っており、物理の考え方を学ぶことは工学を学ぶために必須だと思われます。しかし、独立した科目として扱われる高校時代から、物理は学生が敬遠する科目の筆頭として定着している様に思われます。工業大学と名前のついているここ大工大でも、入試で物理に選択する人は70%程度であり、30%の学生は物理を避けています。物理は苦手という人がかなりの割合でいるように見受けられます。このような状況は、物理に携わった者として、非常に残念です。 何故このようなことになるのでしょうか?一つは物理の考え方が馴染みにくいことが考えられます。また経験から得られた運動理解と繋がらないことも理由かと思います。
 私たちの研究室では、物理の不人気を挽回するための新しい物理教育を考えています。特にコンピュータを利用して、物理の魅力を広く伝える以下の様な研究に取り組んでいます。
 
1. 自然現象のコンピュータシミュレーション
 一見すると個人的な体験する力学的現象は、学校で学ぶ物理とは大きく異なっている様に思えます。物体の大きさを無視することや、摩擦、抵抗を考えないこと等が、不自然と思えたり、現実の運動とはかけ離れている様に思えたりする人も多いかと思います。さらには、「こんな簡単にして役に立つの?」と思う人もいるでしょう。しかし体験出来る運動を要素に還元し、最も本質的なものだけを取り出した運動方程式は、現実の運動を理解する上で非常に重要なものとなります。この運動方程式に、様々な要素を加えて行くことで複雑な現実の運動の理解が可能になります。
 とはいえ、運動方程式自体も数学的に難しくなるため、一般に答えを得ることが困難になります。運動方程式を解いて運動を理解するためにコンピュータの利用は効果的です。コンピュータを利用することで、運動方程式に現実の条件を取り入れ、私たちが目にする現実の物体の運動を再現(シミュレート)できます。波動を表す波動方程式や流体を表すナビエストークス方程式は、運動方程式に比べ、さらに複雑です。身近な波の様子や液体、気体の運動の正確な理解を物理シミュレーションは効果的に支援します。コンピュータシミュレーションによるこれら方程式の可視化は高度な数学の知識を必要とせずとも物理現象を目の当たりにすることを可能とし、物理理解のためにコンピュータが大きな力を発揮することを示しています。
運動解析システムの実行画面
2. 実験のためのコンピュータ
 物理は「測る」こと元に築きあげられています。このため物理を学ぶときには「測る」こと(実験)について説明を受けますが、高校でも大学でもなかなか自分の手で実験を行うことは困難な状況にあります。これは学ぶべき内容が多く、学校教育の中で実験を行う時間がなかなか取れないという理由に加え、実験のための機材を学生の人数分そろえることが困難ということもあるかと思います。このような実験実施の困難さを取り去るために、コンピュータ1台とウェブカメラだけを用い、コンピュータビジョンを用いた初等力学の運動解析システムの開発を行ないました。
 カメラは1秒に30コマ撮影できるため、2mからの落下運動でも、18コマ程度の撮影が可能となり、映像から運動測定が可能となります。撮影した映像より求めた位置データから、速度、加速度も得ることが出来、これらのグラフ表示や力のベクトル表示も可能として、力と運動の関係が一目で理解可能となっています。より本格的な実験のために、定量的な解析も行えるように製作してあります。
 現在、授業での使用から本システムの活用方法や効果に対する評価を行なっており、効果が確認できれば、広く公開を予定したいと考えています。
作成した物理教育用映像教材のシーン
3. 物理を超えて、教育を考える
 これまでの紙によるテキストに加え、動画や電子書籍など新しい媒体が教育にも取り入れられる様になってきています。しかしこれらの新しい媒体の利用方法は現在も活発に議論が行なわれている段階であり、様々なものが開発されています。私たちもこれらの開発を行なっています。物理教育用動画製作では、動画の学習者への教育効果が期待されるだけではなく、制作者である情報科学部学生が、製作そのものから教育効果を得ており、物理理解も深まっています。さらに限られた日数で企画、製作を行なうことが、グループによるシステム作成やプログラム作成などの生来の業務のための良い訓練となっている様に見受けられます。
 人間という非線形システムを対象とした教育それ自体が非常に興味深い問題だと思えます。多様な学習者の理解を支援する自由度の高い教育システムの構築を目指し、発達心理学などの成果も取り入れ、より良い教育システム開発を目指したいと考えています。