
皆さんは鉄道模型をご存じでしょうか。日本では「Nゲージ」と呼ばれる大きさのものが普及しています。鉄道模型の機関車には(たとえ蒸気機関車やディーゼル機関車でも)モーターが搭載されており、電気エネルギーで回転したモーターの力を車輪に伝達して走行します。
昔の鉄道模型では、車輪の載っている2本のレールのうち、一方を+極、他方を-極にして電気を流し、電圧の大小によってモーターの回転数が変わり、機関車の速度が変わるという制御方法でした。また、+極と-極を逆にすると、機関車の進行方向が変わります。この仕組みの鉄道模型は現在でも存在していますが、電圧の大きさと電流の方向で制御しているため、複数台の機関車を同時にレールに載せると、すべてが(ほぼ)同一速度で走るという特徴があります。

コンピュータ技術が発達した最近の鉄道模型では、番号の割り振られたマイクロコンピュータが各機関車に搭載されており、コントローラ(制御装置)から「5番の機関車のみ発車しなさい」「8番の機関車のみ汽笛を鳴らしなさい」という命令を出すと、それらがレールというネットワークケーブルを介して機関車に届きます。また、ポイントや信号機も同じ方法で制御することができます。この制御方法では、レールの電圧は一定です。
ところで皆さんはハッカーという言葉を聞いたことがあるでしょう。マスコミは「高度な技術で不正アクセスする人」という意味で使っていますが、元々hackという動詞は「おの等でたたき切って物を作る」という意味で、転じて「コンピュータや電気回路について深い技術を持ち、その知識を利用して技術的課題を解決する人」というのが本来のハッカーです。
理工系分野で初めてhackという言葉が使われたのは1950年代でした。アメリカマサチューセッツ工科大学鉄道模型部が中古電話機の部品を使って、鉄道模型の制御システムを作成したのです。このような、機器の創造的な活用方法をhackingと呼びました。
このように、鉄道模型はコンピュータやネットワーク技術と深い関係があるのです。