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研究室VOICE 小規模施設に適用できる浄水技術の開発

工学部

Profile

工学部環境工学科

笠原 伸介教授

水代謝システム研究室

図1 コンパクト浄水システムの概要
私たちが日常的に使用する水は、上水道システムによって供給されています。上水道システムは、水を浄化するための「浄水施設」や浄化した水を末端まで輸送するための「管路施設」などから構成され、その運転や維持管理には多くの技術者が関与しています。現在、日本国内の水道普及率は約98%であり、国内に在住する人のほとんどはその恩恵を受けています。しかし、近年では各地で人口減少が進み、高齢化や過疎化が進む地方都市を中心に、水道技術者の確保や水道施設の維持が困難となりつつあります。こうした現状をふまえ、水代謝システム研究室では、特にコストや人的資源に対する制約が大きい小規模施設への適用を想定し、なるべく高度な維持管理技術を必要としない、シンプル且つ合理的な浄水技術の開発に取り組んでいます。
 
施設のダウンサイジングを可能にするコンパクトフィルター
一般的な浄水施設は、公に定められた「水道施設設計指針」に則って設計されています。現在の設計指針では、なるべく径の大きなろ材を厚く充填し、高速でろ過することによって、ろ層全体を効率よく利用することを目指します。これに対し、私たちの研究では、設計指針の規定範囲を大きく下回る微細珪砂を採用し、ろ層の比表面積(表面積/充填体積)を著しく高めることで、層厚の短縮を目指しています。このフィルターを採用すれば、付帯設備を含めた装置全体の小型化が可能となるうえ、水質変動時においても安定した処理効果を期待できます(図1)。
図2 クリプトスポリジウム原虫のモデル粒子
運転管理の省力化を可能にするバイオフィルター
また、現在の浄水施設では、濁質を除去するために薬品添加が不可欠ですが、ろ層内に繁殖する微生物の作用を積極的に活用することにより、無薬注で処理を行うことができるシステムの研究も行っています。この方式を採用すれば、日常的な運転操作のほとんどを機械化・自動化できるようになり、運転管理の大幅な省力化が可能となります。至ってシンプルな方法ですが、これまでに行った検討の結果、条件次第では、クリプトスポリジウム原虫※が99%以上除去されるほど高い能力を発揮することが分かりました(図2)。
 
※感染症を引き起こす原虫の一種。消毒剤(塩素)に対する抵抗力が強く、塩素処理された水道水中でも生息することができる。