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研究室VOICE あなたの命は食品の3つの機能に守られています。

工学部

Profile

工学部生命工学科

川原 幸一教授

機能性食品研究室

<機能性食品研究室で行われている研究概略図>
1950年代以前までの日本は、戦後まもなく食べるものに困り、栄養がとれず不治の病と言われた結核などが蔓延していました。しかしながら、徐々に衛生面などのインフラが整備されその結核は早期発見、早期診断が行われ完治するまでに至っています。実はそこには、食の変化も大きく貢献しています。というのは、当時(昭和36年)の厚生省が提唱した「フライパン運動」など食の欧米化、すなわち、高タンパク質、高脂肪食となり栄養面が一気に向上したからです。これを基に日本では、「生きるための」栄養学が発展しました。そして、言うまでもなく現在までに日本の平均寿命は、瞬く間に世界一へと上り詰めました。また、さらには嗜好性への欲求を満たし、「グルメ」という言葉も流行りました。そして現在では日本食が注目を浴び、これは3番目の食の機能、すなわち、機能性食品へとつながります。機能性食品というコンセプトは日本が最初に世界へ発信しました。食品は命を守り、助けています。
食品の3つの機能:栄養、嗜好、恒常性の維持
栄養:命を助ける
ヒトはなぜごはん(食事)を食べるのでしょうか?もちろん、生きるためにヒトは食事をするのです。そして、より元気で、より長く生きるために食べるのです。
本来、動物は肉食系でした。過酷な生存競争を生き抜くために「植物を食べる」という選択をしました。これは、肉食の限界を知った一部の動物が逃げも隠れもしない、出来ない植物を食べるのはごく当たり前です。それは、細菌類を体内に取り込むことで可能にしました。したがって、生き延びるために消化器系を進化させ、私たちは「雑食」になることで多様なモノを食べる欲求を満たしました。そして、結果的に私たちの命を助けてくれました。
 
嗜好性: 恒久的な食への欲求
ヒトは食を通じて幾つかの感覚器を発達させています。目は、緑と赤を区別出来きます。これは、実が熟したかを判断するためです。また鼻は、例えば、魚の鮭が元の場所に帰る時に鼻を使っているそうです。本来はその場所に向かうために化学物質を嗅ぎ分けるための役目だそうです。ところで、私たちヒトは風邪で鼻が詰まった時は味を感じない経験しているはずです。実は、ヒトだけ鼻と咽頭がつながっています。したがって、嗅覚(匂い)も味覚を感知するセンサーなのです。さらに舌には五味(甘味、塩味、苦味、酸味、旨味)を感知する味蕾が備わっています。ヒトは、これらに加え、舌触り、喉ごしが複雑に絡まり食を味わっています。すなわち、ヒトは、食べ合わせ、付け合せを組み合わすことで感覚器を発達させてきました。そして、嗜好性が刺激され欲求を満たすために食を堪能しています。ここに、多様なものを食べようとする欲求ばかりか、美味しさの欲求が進化してきました。現在は、食の悪しき選択により生活習慣病に罹患するリスクが高まっています。
 
生体調節機能:命を守る
今、最も注目されているのが食品の3つ目の機能、すなわち、生体調節機能効果です。そしてこの概念は日本が最初に世界へ発信しました。質量分析装置、核磁気共鳴装置などの解析機器が発達し、事細かに解析、知見が得られるようになりました。その恩恵により、これまでの受け身のカロリーや栄養価だけでなく、より積極的にこの食品に備わっている特殊な機能を解析、活用するようになりました。ただ、何となく健康に良い食品から、具体的な病気の予防成分を持った食品へと変化してきました。これは現代の生活習慣病の予防につながっていきます。さらに、栄養学、食品学、薬学、医学ばかりか最近では工学との研究分野とのクロストークが進み機能性食品学は飛躍的に進歩しています。上記2つの機能を私たちは好んできました。しかしながら、交通の便の発達、食の選択の多様性、嗜好欲への強さにより、生活習慣病が増加傾向にあります。したがって、食への関心は食べて命を助けるから守る、へと舵を取り始めています。
 
私たちの生命工学科機能性食品研究室では、食品の新規機能性の探索、分子メカニズムの解明、そして、病態(敗血症、アレルギー、老化、動脈硬化など)への予防の解析を遺伝子、タンパク質、細胞、そしてモデル動物で解析しています。そして最終的なゴールは、もちろん、「栄養満点、おいしい、健康!」をモットーに研究をしています。
是非、調べてみたい食品、成分がありましたら私たちの研究室にご持参していただき、一緒に研究をしましょう!