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研究室VOICE 騒音を良くするということ

工学部

Profile

工学部機械工学科

吉田 準史教授

振動・音響研究室

図1:ダミーヘッドマイクロホン
みなさんの身の回りには、さまざまな機械製品や電気製品があると思います。自動車や飛行機、電車、ロボットそしてテレビや掃除機、洗濯機など、たくさんの製品があります。これらの製品が動いているところを思い浮かべてみてください。「ブーン」「ザー」など、いろんな音が聞こえてきませんか?多くの製品は、その中にエンジンやモーターなどの「動力源」が入っているため、そこから音が発生します。勝手に発生してしまう音だけではなく「ピーッ」や「ピコピコ」という、止まる、動くなどの情報を周りの人に知らせるために音を出す場合もあります。これらのいろいろな音の中で耳障りなもの、うるさいと感じるものを「騒音」と呼びます。そしてこの「騒音」は何かが「振動」することによって発生します。我々の研究室では、この振動や騒音を「良くすること」を目的に研究を進めています。

「騒音を良くすること」とはどういうことでしょうか?「騒音を小さくする」=「騒音を良くする」でしょうか?実は、常にそうとは限りません。たとえば、電車の中で大きな音で音楽を聴いている人にとって、その音は「音楽」です。しかしまわりの人にしてみれば「騒音」になります。自動車の排気音も同様に、大きな音がでるマフラーに交換する人もいれば、その音を単に「騒音」と感じる人もいます。このように「騒音を良くする」ためには、単純に騒音を小さくすることだけでなく、その騒音を聴く人にとって心地よい音、耳障りでない音に調整することが必要です。そのために我々は、人間の鼓膜に到達する音の信号を忠実に録音できる図1のような特殊なマイクを使って自動車や電車、家電製品の音を収録し、その音をどのように感じるのか、ということを調査しています。そして、騒音を良くするためには、どのような周波数の音を下げればよいのか、どのような変動の音が不快に感じられるのか、ということを明らかにしようとしています。
図2:伝達経路解析
また、このような研究を通じて、どのような音が良いのか?どのような音が耳障りなのか?ということがわかってくると次に、騒音を良くするために製品を改善する必要があります。たとえば、車を走行中のある周波数の音を下げる必要がある場合、どうすればよいでしょうか?実はこれ、なかなか難しい問題です。自動車にはエンジンだけでなく、タイヤやサスペンション、吸気や排気など多くの部品で構成されている複雑な機械であるため、どこを対策すればよいのか探すのに一苦労です。そこで我々は、どの部品が悪くて、車内の耳障りな音が発生しているのかを追及できる技術の開発(寄与分離技術の研究)も行なっています。この技術は、図2に示すように、自動車の様々な点の振動や音を一緒に測定して、その結果を分析、計算することで、どこの部品を対策すれば、騒音を良くすることができるのか、ということを明らかにすることができます。
図3:振動分析
そして最後に対策が必要な部品が見つかると実際にどのような部分が弱いのか、どのような形にすれば振動、騒音を抑えることができて、騒音を良くすることができるのか、ということを図3に示すような各部品の振動特性を調査して明らかにしています。
 
このように我々の研究室では、広い視点で騒音、振動をとらえ、様々な製品と人間が心地よく調和して生活できることを目指して、日々研究を進めています。