
4月のはじめ、大学に入学すると、新入生ガイダンスがあります。その年の新入学生が学部・学科ごとに一堂に会し、どんな授業があるか、どうやって単位を取るか、どんな制度があるかについての説明を受ける機会です。これらはもちろんみなさんの大学生活にとってとても重要な情報なわけですが、おそらくその場でみなさんがもっと気になっているのは、「友だちができるかどうか」なのではないでしょうか。
人には、相手と仲良くなりたいという欲求と、反対に相手から踏み込まれたくないという欲求があるとされています。同時に私たちは、そのような欲求が自分だけでなく目の前の相手にもあることを知っています。だからみなさんはおそらく、自分についてあまり深いことをさらけ出さないよう、そして相手に押しつけがましいやつだと思われないよう気を配りながら、それでも友だちになろうとして初対面の同級生にそうっと話しかけるのです。あるいは、おどおどしているやつだと見くびられないよう、あくまで平気な顔をしながら。

私は、ことばと人間関係の研究をしています。初対面に限らず、私たちは誰かとコミュニケーションをとるとき、常に(意識的・無意識的に)これを言ったら相手はどう感じるか、自分は相手からどう思われるかを、相手との人間関係や状況を考えながら話しています。そしてことばを通して人間関係を作り上げています。
最近の私の研究対象は、恋愛関係を作り上げていく女性と男性とのコミュニケーションです。その中でいつも学生のみなさんに一番興味を持ってもらえるのは、「合コン」の研究です。とはいっても、みなさんが期待するような「合コンでの必勝法」ではありませんのであしからず。
日本語には独自の敬語体系があるためコミュニケーションはより複雑ですが、そのため、日本語のコミュニケーション研究は世界的にも求められています。私自身もこれまで度々国際学会で発表を行ってきました。
英語を用いていかに自分の主張を的確に表現するか。そこに文系・理系の壁はありません。私の英語の授業ではしばしば学生さんたちに英語でグループ発表をやってもらっています。どう表現すれば言いたいことが相手に伝わるか、どうすれば魅力的な発表になるかを一緒に考え、実践する——そこは同時に、新しい人間関係作りの実践の場でもあるといえるかもしれません。