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研究室VOICE 超分子のセカイ

工学部

Profile

工学部応用化学科

村岡 雅弘教授

超分子研究室

インターロック化合物の例
2016年のノーベル化学賞は「分子マシンの設計と合成への貢献」でSauvage, Stoddart, Feringa の3氏に授与されました。これまでの化学賞では応用研究が多かったのですが、直近の2016年は有機化学分野における比較的基礎的な研究が受賞しました。私が所属する工学部応用化学科では、化学の基礎から物質創成や材料への応用など幅広く研究していますが、その中で私が担当する「有機機能化学領域・超分子研究室」では、まさに今回のノーベル化学賞のテーマに関連する分野で日々研究を進めています。その研究事例を一部紹介しましょう。

分子マシンとは、機械的な機構を模倣した分子や、機械のような動きをする分子、のことです。その役割を果たす代表物質群は、分子同士が互いに絡み合って形成する「インターロック化合物」で、ロタキサンやカテナンという超分子がその代表例です。ロタキサン(rotaxane)は、環状分子に棒状分子が貫通した分子構造を有していて、カテナン(catenane)は、環状分子同士が鎖のように絡み合って連結した分子構造を有しています。まさにお互いに絡み合った分子集合体のことで、超分子の代表例となっています。我々の研究室では、上記のロタキサンを効率よく有機合成するために、分子同士が互いに強く引き寄せあうような種々の分子間力の要素を分子設計に組み込み、その設計図をもとに実際に合成し、各々の分子同士をからみ合わせて、多種類のインターロック化合物であるロタキサンを合成しています。
包接化合物の構造
次に我々は、合成したロタキサン超分子を機械のように自在に動かすことを証明しました。例えば、酸と塩基をそれぞれ用いると環状分子の位置を変化させることができ、分子レベルのスイッチとして振舞うことができます。将来は、そのような分子の運動挙動を巧みに利用したデバイスやスイッチ、センサーなどへの応用研究に発展させていきたいと思います。今回のノーベル化学賞をきっかけに、分子マシン分野のさらなる発展が期待されます。