
本学の研究施設として、京都府八幡市に八幡工学実験場構造実験センターがあります。このセンターは、2016年12月に開設30周年を迎え、主に都市デザイン工学科および建築学科の構造系の研究室が構造実験を行っています。
建築構造物を構成する架構や部材等の構造性能を検証するための手法として、実験と解析があります。構造物を合理的に設計するために初めて実験を行ったのは、ピサの斜塔で有名なガリレオ・ガリレイだという説もあり、構造実験は古くから行われ、現在でも多く実施されています。
私の研究室も卒業研究や修士研究として鉄筋コンクリート系構造の実験を行っています。研究テーマはRC柱の耐震補強構法やRC壁のプレキャスト化構法など多岐にわたり、既存建物の免震レトロフィットにおける柱軸力仮受け構法の安全性確認実験も行いました。いずれの実験も構法の実用化を目指す開発実験であり、このような開発的な実験が多いことが研究室の特徴であると思っています。
現在の研究テーマの一つは、西村泰志特任教授、馬場望教授と分担して取り組んでいる柱RC梁S混合構造の構造設計法の確立です。この構造形式に関する研究は古くから多くの研究機関で取り組まれてきましたが、建設方法の改善・確立とともに、事務所建築や倉庫に適した合理的な構造形式であるとして近年改めて注目され、建設会社が各社独自に実用化を推進しています。しかし、より一般的な建築構法技術として広く適用されるために、現在私たちも参画している日本建築学会の委員会で本構造に関する構造設計指針を作成しています。指針の作成にあたり、力学モデルに基づく応力伝達機構を検証するため、あるいは残された課題を解決するため、学生にも参画してもらい、実験による検討を進めています。当研究室で行った研究内容はすぐに実社会で役立つ可能性があります。