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研究室VOICE 再生医療の実現を下支えする細胞・組織製造技術とその応用展開

工学部

Profile

工学部生命工学科

長森 英二准教授

生物プロセス工学研究室

図1:ヒトiPS細胞大量製造に関わる操作論
 新しい再生医療技術は医学研究者により開発されますが、これを万人に行き届く社会実装技術とするには工学者の関与が欠かせません。医師が使う薬を製薬メーカーが作って届けているのと同様に、再生医療という新しい治療法を実現するには、細胞・組織・臓器を製造して医療機関に届ける“新しいバイオものづくり産業”を切り拓く必要があります。再生医療を下支えする細胞・組織製造産業を実現に導くにはどのような新しい技術開発が必要でしょうか。まず、治療に足りるだけの大量(10億~100億個/患者)の細胞を、必要な時に必要なだけ、培養・製造・調達する技術が必要です。ヒトiPS細胞の特徴を考え、バイオリアクターで安定して培養するための装置・操作論の設計技術を開発してきました(図1)。
図2:複雑構造組織を作るための組織内細胞挙動の理解と制御
 昨今の報道でとりあげられている黎明期の再生医療では、用いる細胞種は単一であり、構造も比較的単純なものを用います。次世代の再生医療技術として期待されるのが、血管など複雑構造を有する組織・臓器の構築技術です。組織内の異種細胞の挙動を理解し制御することで、所望の最終構造を有する複雑組織を製造する技術の体系化に取り組んでいます(図2)。
図3:生体環境模倣環境で鍛えられた培養筋
作製した臓器を機能的に育むためには、生体内環境を適切に模倣した培養技術(臓器バイオリアクター)が必要です。例えば筋肉であれば、十分な栄養や酸素の供給に加え、生体内で神経から受けとる周期的電気刺激を培養環境で再現(筋トレ培養)することで、筋組織が肥大・発達し、活性張力も増大することを示しました(図3)。電気刺激を停止すると加齢や寝たきり等で起こる筋委縮(退化)を人工環境下で再現することにも成功しました。
 以上のような、細胞・組織を設計・構築し育む技術の応用先は再生医療だけではありません。筋疾患に関わる創薬支援技術や培養食肉、培養筋アクチュエーターの実現を目指し、日々の研究における企業連携はもちろん、産学連携コンソーシアムの形成を通じて技術の社会実装像の創造活動を推進しています。