
はじめに
みなさん、こんにちは。枚方キャンパスで英語を担当しております古樋です。実は、工大工学部第I部電子工学科OBですが、英語の教員をやっております。工大卒業後から、仕事の傍ら英語関連の学部や大学院に通っておりました。
工大移籍までの職歴は、工業高校で専門教科教諭を鳥取と大阪で計12年、工業高専で英語教員を岡山で14年です。
私の関心のある課題は、語彙・コロケーション(単語のまとまり)習得、映画の台詞や楽曲のPVなど映像メディアを活用した英語教育です。科学技術分野の英語にも興味があります。
今回は英語運用能力向上にはまずは語彙力が不可欠という立場で、語彙力向上策を考えます。そのひとつの方法としてカタカナ語の活用を取り上げてみましょう。
カタカナ語を用いた英語語彙学習
英語を習得するにはどうすればよいでしょうか。単語、熟語を知らないと英文を読めません。もちろん文法も重要です。しかし、やはりまずは語彙力です。
英文を理解するには英文中の語彙の98パーセント以上が既知である必要があるという語彙研究の世界で有名な数値があります。これに倣うなら、一般的な英語の書籍は1ページ300語程度なのですが、ページ当たり未知語は6語程度以下に抑えなければなりません。
とにかく未知語を減らすことが英文理解には重要です。ではどうすればよいでしょうか。解決手段のひとつに、持ち駒を強化するという方法があります。既存の知識、そう、カタカナ語の活用です。
日本語の語彙には英語由来のものが多く含まれています。日常生活でも多くのカタカナ語のお世話になっていますよね。このように、すでに持っている知識を活用して英語の語彙を習得していこうという方針です。
私の所属が情報メディア学科ですから、今回はメディアという語を取り上げます。みなさんはメディアというカタカナ語を見聞きされたことありますよね。たとえば、新聞やテレビなどのことで、mediaという英語が元になっています。「メディアに取り上げられた」などと言うでしょう。
また、少し乱暴な面もありますが、とりあえずは、mediaは複数形で、単数形はmediumなのです。カタカナ語としてはミディアムと読みます。ミディアムといえば、肉の焼き加減を指定する際に使いますよね。某ステーキチェーン店では「レアがおすすめです」と促されますと、私など、つい「レアでお願いします」と答えてしまいがちです。本当はもうちょっと焼いたのが好みですけど。
さて、このmediaやmediumは、DVD等のデータ記録媒体という意味や、霊媒師という意味も持っています。DVD-Rやイタコにユタ等ですね。
ところで、新聞・テレビ、焼き加減が中くらい、記録媒体、それに霊媒師ですが、共通する要素を何か見いだせますか。
すべて、たとえばA、Bというモノ・状態があったとして、その間に入るものですね。新聞やテレビは事件の現場と情報の受け手、よく焼いた状態とあまり焼かない状態、2つのPC、あの世とこの世の間を取り持っています。この「間に入る」というのが基本となる意味です。
このように日常生活で見聞きする言葉でも少し調べれば単なるカタカナ語から英語の語彙知識へと発展させることが可能です。
余談ですが、先ほどステーキ、チェーン、レアというカタカナ語も登場しました。ここではレア、つまり、rareだけ少し解説しましょう。ステーキの話題ですと、レアはあまりよく焼いていないことを意味します。他の意味のレアもカタカナ語として使いますが、何でしょうか。そうですね、レア物というと、希少であることを意味します。
この生焼けと希少に共通点はあるのでしょうか。実は偶然に形が同じだけで元々生い立ちの異なる語であり、共通点は見いだせません。
ところで、空気が希少であるというのは、空気が薄いということです。非常に高い山や、上空高く飛べば、空気は希薄ですね。フランク・シナトラの“Come Fly With Me”という有名な曲にThe air is so rarified.という一節があります。rarifiedはrarifyの過去分詞で、もちろん、希少であるrareの仲間の単語であります。
さて、カタカナ語から英語の語彙学習を進めてみようというお話しをさせていただきました。こういった内容はありふれた話であり、大したインパクトもなかったですか。あ、またインパクトなんてカタカナ語使ってしまいました。日本語にはカタカナ語があふれています。そして,みなさんはすでに相当な知識をお持ちです。ぜひカタカナ語の知識を発展させて英語の語彙の勉強に有効活用してください。
ところで、インドでは2017年(日本では2019年9月)公開の「ヒンディー・ミディアム」(原題 Hindi Medium)という映画があります。内容の想像つきますか。
mediumは間に入るということでしたね。ヒンディー語はインドの公用語のひとつです。ここではヒンディー語を用いて教育する学校を指します。これに対して、英語で教育を行う学校をEnglish mediumと呼びます。人と人が意思疎通する手段・媒体として、ヒンディーを使うか、英語を使うかということでした。機会があればこの映画もご覧ください。ちなみに、「マダム・イン・ニューヨーク」(English Vinglish)という同じくインド映画ではEnglish mediumの学校の様子が描かれています。
おわりに
拙稿の題名にある「きっと、うまくいく」は同名のインド映画(原題 3 Idiots)に由来します。英語ではたとえばAll is well. 何度も唱えると願いが叶うかもしれません。
普段からなんとなく使っているカタカナ語も、きちんと調べれば英語力向上に役立ちます。ぜひ実践してみてください。きっと、うまくいきます。では、All's Well That Ends Well.「終わりよければすべてよし」(シェイクスピアの戯曲)ということで、最後までお付き合いいただきありがとうございました。