
どうしても興味があってたまらないものがありますか?
気になるけれどどこか怖くて口に出さずに想うものがありますか?
それは同じく研究になる種の一つかもしれません。
本年 4 月に開いた私たちの創作情報工学研究室では、可能な限りそれを研究に結び付けようとしています。研究が楽しく、自分の知識を活かして新たなものを創り出せる、と考えられるケースがあるからです。本当に好きなものを語る時、人は良い表情をしています。そういう表情の学生と話しているとつい面白く、「これも研究につながる、こんなデータを集めて分類して、こうしてコンピュータに学習させて」と研究の話を始めてしまいます。
学生たちや研究を通じて会う周囲の人々が私が知らないものを教えてくれるので、日々新たなことを学ぶ機会があり、情報が増えます。
さて、良いことばかりに聞こえるのですが、実際、好きなものを新たな研究として世に出すというのは、相当に楽しくも苦しく難しいことです。先人たちが未だ創っていないものを見つける必要があるからです。そのため、何でもとは言えませんが、私の専門分野と合わせて可能な方向へと相談を重ねます。
例えば、写真の詳細な自動評価をする、私たちの日常が詰め込まれた漫画のストーリーをコンピュータに学習させる、小説の創作を支援するシステムを創るなど、画像と言語に関わる創作物の情報を中心に人工知能分野の研究を進めています。データを収集し、プログラミングにより手法を構築し、実験して評価し、発表するというのが一連のプロセスです。
研究者によって方針は様々ですが、私は幼い頃から自分の興味があることを、今中心に据えて研究をしています。
「創作物という人が知識や経験の特徴を捉えて工夫して抽象化したものを通じて、人がどう物事を感じ、ストーリーとして表現するのかという思考過程を数値に落とし込んで知りたい」というのが私の一番のモチベーションです。
読書が好きです。専門書、小説、漫画、大体は何でも読みます。自分でも文や絵を描きます。架空でも現実でもとにかく創り手がカタチに表したものを知ることが好きです。同じ理由で、知識と技術が詰め込まれた電子製品も好きです。
「研究という目で見ると、嫌になりませんか。」とたまに聞かれます。好きで触れるのが時々怖いとか今は作品を純粋に味わっていたいという意味ではたまにあるかもしれません。とはいえ、その最中に、研究のアイデアが浮かんだ時世に還元できる像が浮かんだ時はワクワクしていくらでも考えられます。冒頭で述べた、突き詰めたい、怖い、という感覚は表裏一体ではないでしょうか。その感覚を持ち得る人として生きているからには、対極として表現されがちな、電子の世界の知が結集して生まれた機器に、人の最も難しい創造的な活動に伴う感性を学ばせて人に役立つものを創るという研究を通じて、人と工学との良い未来を築いていきたいと思います。
新しくなった所属学科についても一言。
本学科は、ハードウェアもソフトウェアも一通り、電子にまつわる歴史を順番に追えるような、とにかく学びの幅が広いことが特徴的です。電子・情報・システムに関わるテーマの中で、どれが向いているかわからないと思っているなら、本学科の中ですべて学んで、この分野だと思うものを突き詰めてみませんか。