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研究室VOICE 人々の健康に貢献できる酵素を求めて

工学部

Profile

工学部生命工学科

大森 勇門准教授

食品微生物学研究室

微生物の培養や酵素の機能解析で使用する機器
皆さんは「酵素」についてどのような印象を持っていますか?食品や日用品のCMやパッケージなどでも酵素という名称は出てきますので、目にする機会は多いのではないかと思いますが、特段気に留めることもないかもしれません。ですが、酵素は私たちの生活を様々な面から支え、豊かなものにしてくれています。
私たちの研究室では微生物の酵素を探してその性質を調べ、それらを産業へ応用することを目指しています。特に臨床や食品検査に応用できるような酵素をターゲットにしています。検査に酵素が使われていると聞くと、意外に思うでしょうか?病院や食品工場、それから家庭でも微生物の酵素を利用した検査技術がたくさん使われています。
例えば血糖値センサーでは、糖(グルコース)を分解する酵素が測定部分に使われていますし、私のように中年に差し掛かってきますと血液検査の結果を見ては、今年は肝臓の数値が良かったとか悪かったとか一喜一憂しがちなのですが、この数値を調べる検査にも酵素が使われています。
酵素は「基質特異性」という性質を持っており、これは特定の化合物のみに働くという性質のことで、高い分子識別能力を酵素は元々備えています。この性質を検査に応用しているのです。しかし酵素はタンパク質であり言ってしまえば「なまもの」ですので、壊れやすいという欠点があります。この欠点を補うために、私たちは好熱菌と呼ばれる50~60˚Cで生育するような微生物がもつ酵素を研究対象にしています。高温環境で生きる微生物がもつ酵素は熱に強いので、常温では壊れづらいです。微生物の中にはさらに高い温度、90あるいは100˚C以上でも生育できる、超好熱菌がいます。より高い温度で生育している超好熱菌の方が好熱菌よりも熱に強い酵素を持っていると考えられますので、そちらの方が良いのでは、と思うかもしれません。しかし超好熱菌の酵素は壊れづらいかもしれませんが、高温でよく働く酵素ですので、私たちが使用したい常温においてはほとんど機能しません。熱に強く、なおかつ常温でも十分な機能を期待できるのが好熱菌の酵素なのです。
私たちが好熱菌から見つけた酵素が検査で利用されることを目指して日々研究を行っています。