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研究室VOICE 超短光パルスが照らし出す物質の性質と機能性

工学部

Profile

工学部一般教育科

長谷川 尊之講師

超高速光物理研究室

超短光パルスの計測結果
 私は主に1・2年次対象の物理系の基礎科目を担当しています。また、専門学科の教員と連携して、卒業研究も担当しています。ここでは、超高速光物理研究室で行っている研究についてご紹介します。
 
超短光パルスとその使い道
短い時間だけ継続する光を「光パルス」と呼びます。身近なものでは、カメラのフラッシュや雷の閃光が光パルスの一種です。カメラのフラッシュは短くても1万分の1秒(0.1ミリ秒)程度の継続時間ですが、レーザー技術を用いれば1兆分の1秒(1ピコ秒)より短い超短光パルスを作り出すことができます。このような特殊な光が何に役立つのかというと、物質の性質の起源を明らかにできたり、その性質を制御できたりするパワフルなツールになります。
超高速分光の実験風景。多種多様なミラーやレンズを使用します。
 私たちの身の回りの電子デバイスには様々な半導体材料が使われています。その半導体中の電子や原子は、数ピコ秒の時間スケールで高速に運動しており、それが半導体の性質や機能性に関与しています。この高速な運動を追跡して探求するためには、電気で動作する装置では難しく、超短光パルスを駆使した超高速分光法(極短時間のフラッシュ撮影)が必要になります。また、超短光パルスが照射された物質には、ごく短い時間だけ光のエネルギーが与えられます。この局所的な刺激がトリガー(引き金)となって、定常的には生じ得ない現象が誘起され、性質が一時的に変化したりします。
このように、超短光パルスは物質の性質を探求する研究や機能性の開拓において活躍しています。
 
半導体から発生するテラヘルツ波を制御する
 超短光パルスがもたらす現象で私たちが探求しているのは、半導体からのテラヘルツ波発生です。テラヘルツ波は周波数が1テラヘルツ(1012 Hz)前後の電磁波の呼称であり、光科学、センシング、バイオなどさまざまな分野で役立つことから注目を集めています。超短光パルスを半導体表面に照射すると、表面近傍の電子や原子がエネルギーを得て集団的に運動し始めます。この集団運動によって生じる過渡的な電流などがテラヘルツ波の発生源となります。放射されるテラヘルツ波の時間波形は、電子や原子の“運動の仕方”で決まります。そこで、電子や原子の運動を深く理解して制御する方法を確立し、テラヘルツ波放射を制御することを目指しています。