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研究室VOICE 温度だけでは分からない

工学部

Profile

工学部環境工学科

加賀田 翔講師

熱エネルギー工学研究室

1_サウナで生じる温度分布イメージ図
 最近サウナがブームになっていますが、サウナに入って、温度計を見て、ビックリした事がある人もいるのではないでしょうか。サウナの温度計はだいたい80℃〜100℃を指しています。もし80℃〜100℃のフライパンを素手で触ればヤケドします。でもサウナは素手どころか、裸足で歩いたり、裸で座ったりしてもヤケドしません。なぜでしょうか?それはサウナに使われている木材の「熱物性」の影響です。
 
 「熱物性」とは、物質が持つ温度変化や熱の移動に関係する特性で、それらを表す指標を「熱物性値」といいます。このサウナの件で関係する熱物性値は、「熱伝導率λ」、「比熱c」、「密度ρ」の3つです。木材は一般的にこれら3つの値がどれも低く、鉄などの金属は値が高いです。また人間の皮膚の値は、木材と金属の間になります。金属>皮膚>木材です。
2_光音響法の測定装置
 温度が違う2つの物体が接触したとき、その接触面の温度は、この3つの熱物性値が高い方の温度に近くなります。(厳密には√(ρcλ)が高い方の温度に近くなります。) つまり、「金属」と「皮膚」が接触した時の接触面の温度は、熱物性値が高い「金属」の温度に近くなります。なので、金属が80~100℃であれば、接触面の温度もそれに近くなるのでヤケドします。一方で、「木材」と「皮膚」が接触した時の接触面の温度は、「皮膚」の温度に近くなります。たとえサウナの「木材」が80~100℃でも、人体の温度は30~40℃なので、接触面の温度は人体の温度に近い温度になってヤケドせずに済みます。このように単純に温度だけで考えられない現象を解明するのに、「熱物性値」が役に立ちます。
 
 「熱物性値」は工業製品の設計においても重要です。熱の移動を考慮した設計をしないと、高温で壊れてしまったり、また熱エネルギーをうまく利用できなかったりします。でも熱物性値を計測する事は簡単ではありません。私の研究室では「光音響法」という技術で「光」と「音」を使って「熱物性値」をできるだけ簡単に測定するための研究を行っています。過去にはこの技術を使って実際に人間の皮膚の熱物性値を測った事もあります。詳しくはこちらをご参照ください。
 
 いつかこの光音響法を使って、誰でもどこでも手軽に熱物性値が測れるようになることを夢見て、日々学生と研究を行っています。
 
 
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