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研究室VOICE 半剛接のすすめ

工学部

Profile

工学部建築学科

林 暁光准教授

建築構造力学研究室

図1 八幡実験場で行った載荷実験
最近、大きな建物の崩壊という衝撃的な映像が国際ニュースのテレビ番組から飛び出ていますが、外国の建物にしても、なぜ新しい建物も地震で倒壊したのかとの疑問を抱いている人は少なくありません。原因はいろいろありますが、設計技術者のコンピュータ解析モデルの誤差も一因であると考えられます。ここでは、建物のよく壊れる部位である接合部について、本研究室の検討事例を紹介します。
 
建築分野の鉄骨造建物は、部材の特徴から言えば、基本的に鉄の板で構成されています。柱・はりの継手や接合部では、板同士の接合によって組み立てられており、古くから溶接による接合が使われています。溶接という接合方法の構造強度上のメリットは大きく、構造設計技術者にとって最も扱いやすい接合方法だと言えます。一方、過去の震災では溶接接合部の破断事例が数多く指摘されており、施工や経済面のデメリットも大きく、最近溶接のかわりにメカニカル的な機構などを用いる接合方法も開発されています。
図2 接合部の復元力履歴特性
高力ボルトと接合金物を用いる引張接合部では、無理のない設計ならば内在的な変形によって半剛半強の接合、つまり「半剛接」になるので、地震多発国の日本では一部戸建住宅のような建築物を除いてほとんど使用されておらず、普及しておりません。半剛接の場合は耐力や剛性のほか、地震時のエネルギー吸収能力を示す復元力履歴特性の検討も欠かせません。図2のような実験結果は従来の鉄骨構造骨組の履歴特性と大きく異なるので、本研究室では複数のRamberg-Osgood曲線+直線で組み合わせた履歴モデルを提案しています。
図3 建物の地震応答解析
さらに図示の定振幅よりも小さな揺れ(ランダムな揺れ)に対して、エネルギー吸収能力の低減評価方法も提案しており、図3はこの低減の評価式がなければ、建物の揺れ(最大変位応答)が3割以上も過小評価される事例を示しています。つまり「精度が良いと言えない解析モデルを使用した建築技術者のコンピュータシミュレーションは、最近よく報道されている地震時の建物の倒壊を見逃がしてしまう」という結末も容易に想像できます。


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