
私は数学の一分野である可換環論という分野を専門に研究しています。可換環とは、「整数の集まり」や「多項式の集まり」のように、足し算・引き算・掛け算が可能なものの集まりのことを言います。高校の数学では多項式がよく出てきますが、そこで学ぶ「因数分解」とか「商と余り」って何だか、小学生のころ算数で学んだ整数の「素因数分解」とか「余りのある割り算」とどことなく似ていませんか。もしもそんな風に思ったことがあるのであれば、それはとても鋭い感覚だと思います。実は、整数の集まりと多項式の集まりは、可換環という立場から見ると同じ性質を持っています。そのことをきちんと理解するには、足し算・引き算・掛け算が可能なものの集まり(=可換環)について深く考える必要があります。それを調べるのが可換環論です。

可換環は、定義がシンプルであるため、数学の様々な分野に現れます。それゆえに奥が深く、勉強していてとても面白いことは間違いないのですが、未解決の問題を自力で証明することは簡単ではありません。いくら考えても何も進まないことは日常茶飯事です。そんなとき、私はよく周りの研究者に聞いて助けを求めます。わからないことを聞くのは勇気が要りますが、一人だと堂々巡りしていて解決の糸口が見えなかったことが相談したらすぐ解決したなんてことは、誰しも経験があるのではないでしょうか。しかも数学は世界共通語ですから、国内に限らず、世界中の研究者に聞くことができます。お互いの研究室に訪れて、自分の考えたことを話したり相手の話を聞いたりと、朝から晩まで一緒に考えていると、時々面白いアイディアが浮かびます。そうして前に進めば一緒に喜びを分かち合い、また議論します。

写真は、これまでに私が研究滞在をしてお世話になった海外の研究者の方々との写真です。これら三枚の写真以外にも、日本国内をはじめとして、たくさんの研究者の方々にお世話になっています。皆さんも、わからないことがあったらぜひ私の研究室まで聞きに来てください。