
みなさんは「ダンス」と聞いて何を連想しますか?「芸術」や「エンターテイメント」としてのダンスを連想される方は多いのではないでしょうか。 実はダンスには、Dance Medicine and Science(ダンス医科学)と呼ばれる科学的根拠に基づきダンスを解明する研究分野としての顔があります。長年ダンスは芸術として認識されてきたため、ダンス医科学としての歴史はまだ浅いです。しかし、学校教育の中でダンスが必修化となり、オリンピック種目としても取り入れられたように、以前より多くの場でダンスは身近なものとなり、それに伴い研究も発展してきていると感じます。
私は、ダンスの中でも特にバレエに着目した研究に取り組んでいます。これまでは、バレエの基本動作と障害発生の関係を検討したり、トレーニング効果の研究をおこなったりしていました。その結果、ターンアウト(下肢を外に向けるバレエの基本動作)が十分にできない場合、下肢の障害発生率が高いことが分かり、ストレッチングのみならず筋力トレーニングを実施し、ターンアウトを自身でコントロールすることの重要性を示すことができました。

現在は、健康のためにバレエに取り組む方が多いことに着目し大人からバレエを始めた人々を対象に研究を行っています。バレエが大人のバレエ受講者に身体のみならず精神的にももたらす効果を検証しています。
少しずつ、ダンスの研究が進むことで、老若男女問わず、健常者だけでなく様々な障害を抱える方にとってもダンスは多様に実践できる運動であることが広く認識されることを願っています。
【図1】ターンアウトの測定風景
ターンアウトは、下肢を外側に回し、脚や足の内側を前に向けることを意味するバレエの基本動作の一つです。この動作を身に着けることで、美しく正確に踊ることができるため、初心者から上級者まで常に練習に取り組んでいます。
【図2】学会発表の風景
International Association for Dance Medicine and Science (IADMS) 28th Annual Conference: October 25-28, 2018 Helsinki, Finlandでのターンアウトに関する発表