
当センターは、環境保全に特化した微生物資源を核とし、環境バイオ技術を開発するための培養、分析から装置化までを担う産学官連携拠点として、
学内外からの共同研究、産学連携による社会実装に向けた研究を推進することを目的として設立されました。
学内外からの共同研究、産学連携による社会実装に向けた研究を推進することを目的として設立されました。
設立の趣旨
環境問題を技術的に解決する手段としての微生物利用に注目が高まっています。
利活用の高度化や解析手法の進歩は目覚ましく、研究の先端に位置し続けるためには教員同士の連携による相乗効果の発揮が必要です。
当センターは、これまで本学の各教員が個別に研究してきた微生物関連技術を統合し、環境・エネルギー問題の解決に資する
新しいバイオシステムの開発を目指します。
当科が保有する微生物資源を核としたセンターにおいて実験機器・情報・解析手法などを共有することで、効率的に最先端のテーマへ取り組む体制を構築します。
環境工学は常に他分野の技術を取り入れて発展する学問であり、当センターは要素技術を持つ他分野の教員が環境分野へ乗り出す
足がかりとしての役割を有しています。
他学科、海外等の連携大学、企業との共同研究拠点として活用することで学生への教育内容の高度化および大学院教育の充実を目指します。
利活用の高度化や解析手法の進歩は目覚ましく、研究の先端に位置し続けるためには教員同士の連携による相乗効果の発揮が必要です。
当センターは、これまで本学の各教員が個別に研究してきた微生物関連技術を統合し、環境・エネルギー問題の解決に資する
新しいバイオシステムの開発を目指します。
当科が保有する微生物資源を核としたセンターにおいて実験機器・情報・解析手法などを共有することで、効率的に最先端のテーマへ取り組む体制を構築します。
環境工学は常に他分野の技術を取り入れて発展する学問であり、当センターは要素技術を持つ他分野の教員が環境分野へ乗り出す
足がかりとしての役割を有しています。
他学科、海外等の連携大学、企業との共同研究拠点として活用することで学生への教育内容の高度化および大学院教育の充実を目指します。
主な事業
- 環境保全に資する菌株の探索・保存・利用
- 環境微生物群の菌叢解析
- 工学手法の環境微生物への効果検証
- 微生物反応を最大化するリアクタシステムの実験的評価
研究グループ(担当)
バイオ藻類グループ(河村)
オイル産生藻類(微細藻類;石油代替炭化水素生産)
バイオメタングループ(古崎)
メタン生成菌(嫌気性古細菌;廃棄物系バイオマスからのメタン生成)
バイオ排水処理グループ(粟田)
アナモックス菌(嫌気/好気細菌;排水・養殖水槽の窒素除去)
提案システム:2023年度学術研究振興資金採択テーマ
本研究は、「藻類バイオ燃料」、「メタン発酵」、「アナモックス」という3つの環境バイオ技術を統合し、CO2排出量ゼロのバイオエネルギー生産システムの構築を目指します。
本研究は、「メタン発酵」によって生じるBio-gasを「藻類バイオ燃料」を生産する培養槽に通気する方法で、CO2を除去すると同時にBio-oilに変換するシステムの構築を目標とした研究を行います。
このシステムでは、Bio-oil抽出後の残渣をメタン発酵槽に返送するループ構造を作ります。これにより、理論的には全てのバイオマスをメタンもしくはBio-oilに変換できます。
さらに、実施設の運営コスト削減と廃棄物の減容化を念頭に、メタン消化液で微細藻類を培養する技術の開発を並行して行います。このとき、有害なアンモニア態窒素を、無毒な硝酸態窒素に変換する「変換プラグ」として「アナモックス(嫌気性アンモニア酸化)」プロセスを利用します。
これにより、異質な培養槽(メタン発酵+藻類培養)を機能的に連結し、全体システムの物質循環構造を構築することを目指します。
このシステムでは、Bio-oil抽出後の残渣をメタン発酵槽に返送するループ構造を作ります。これにより、理論的には全てのバイオマスをメタンもしくはBio-oilに変換できます。
さらに、実施設の運営コスト削減と廃棄物の減容化を念頭に、メタン消化液で微細藻類を培養する技術の開発を並行して行います。このとき、有害なアンモニア態窒素を、無毒な硝酸態窒素に変換する「変換プラグ」として「アナモックス(嫌気性アンモニア酸化)」プロセスを利用します。
これにより、異質な培養槽(メタン発酵+藻類培養)を機能的に連結し、全体システムの物質循環構造を構築することを目指します。
活動報告
2024.3.15 設立シンポジウムを開催しました。
大阪工業大学大宮キャンパスにて設立シンポジウムを開催しました。
当センターの紹介に加えて、大阪公立大学の徳本先生、デンマーク工科大学(DTU)のIrini Angelidaki先生にも基調講演を頂きました。
環境バイオプロセスの最先端研究の紹介に、第一線の研究・開発者がご参加くださいました。
環境分野のバイオメタネーション技術
バイオメタン生産グループ
嫌気性微生物を用いたバイオマス利活用
今までに取り組んだテーマ
- 下水汚泥と地域バイオマスの共消化
- 下水汚泥の高濃度消化
- 担体(炭化物、MOF)
- メタン発酵前処理(水熱反応、エタノール化)
- 膜分離嫌気性消化(AnMBR)
- 水素発酵バイオエタノール生産
- バイオメタネーション
- ライフサイクルアセスメント(LCA)
メタネーションの社会的背景
メタネーション反応
4H2 + CO2 → CH4 + 2H2O
合成メタン(e-methane):再エネ由来水素から生産したメタン ※日本ガス協会
2050年カーボンニュートラルの実現

第6次エネルギー基本計画(2021.10.22)
- 非電力部門は、脱炭素化された電力による電化を進める
- 電化が難しい部門については、水素や合成燃料などを活用して脱炭素化をはかる
メタネーションの種類

- 触媒メタネーションは発電所や焼却工場など、規模の大きいメタネーションに有利と考えられる。
- 現時点でバイオメタネーションは、嫌気性消化(メタン発酵)との組み合わせが適していると考えられる。

バイオメタネーションの市場性

下水処理施設への嫌気性消化の導入は、伸びしろのあるビジネスといえる。

消化ガスCH4濃度を60%→90%にアップグレードすると、賦存量は発電量として6500GWh/年*となる。
※両グラフとも平成28年度下水道統計に基づく
※日本の全発電量(2019年度863,000GWh)の0.8%
バイオメタネーションとは
バイオメタネーション反応

- 触媒法と同様、水素と二酸化炭素を基質として進行する。
- 水素濃度が低い場合などは、酢酸を経由する反応もある。
- リアクタ温度はメタン生成菌の活性から、37、55、65℃で運転される。

水素資化メタン生成反応
-
図7 Wolfeサイクル -
表1 バイオメタネーションのGibbsエネルギー(pH7) -
表2 水素資化メタン生成菌(Metanogens)の例
バイオメタネーションのフロー

基質の消化とメタネーションを同じ反応槽で行う。
- 1槽で高濃度バイオガスが得られる。
- 水素により消化反応が阻害される恐れがある。

基質の消化とメタネーションを別々の反応槽で行う
- 高負荷運転やメタネーションに特化した装置形状が可能
-
写真1 富士市東部浄化センター(神鋼環境ソリューションHP)
https://www.kobelco-eco.co.jp/topics/news/2018/20190327.html -
写真2 Store&Goプロジェクト(スイス,基質:バイオガス)
https://www.storeandgo.info/demonstration-sites/switzerland/index.html
バイオメタネーションの技術課題

- 水素の飽和濃度は二酸化炭素の約1/40
- 水素資化メタン生成菌の水素利用速度は速く、かつ飽和定数も小さい
バイオメタネーションに関する報告の多くが、水素の液中への効率的な溶解が課題であることを指摘している
※1:(社)日本化学会, 化学便覧 基礎編 改訂5版, 丸善株式会社, 2004, pp. Ⅱ-144-146;モル分率、25℃、1atmに記載の水への溶解度から算出
バイオメタネーションリアクタの運転・評価指標

リアクタ形状

- リアクタ形状の方向性は収束しつつある。
- 他にも加圧リアクタ、パイプ型リアクタなどが提案されている。
- その多くが気-液-微生物の接触に着目した内容である。
A:完全混合反応槽(CSTR)、B:気泡塔リアクタ、C:固定床リアクタ、D:散水床リアクタ、E:中空糸膜リアクタ(MBfR)、F:微生物燃料電池システム(BES)
出典:C.-Y.Lai,L.Zhou,Z.Yuan,J.Guo,“Hydrogen-driven microbial biogas upgrading Advances challenges and solutions,”Water Research,197,p.117120,2021
リアクタ性能に関する研究開発状況

※高温の方が変換能が高い、という報告の方が多い。
※近年は散水床(トリクルベッド)が増えている。
※現状の最高値は水素負荷40 L/L/dくらいと考えられる。
※1二酸化炭素変換率、※2全ガス量、※3出口メタンの値を4倍した
出典:杉本裕,古崎康哲,他: 二酸化炭素有効利用技術 ~DACから物質合成、産業利用まで~,㈱エヌ・ティー・エス,pp.137-145(2022.5)
バイオメタネーション性能向上に関する因子
-
図11 リアクタのイメージ -
- 水素溶解速度
- ガス滞留時間
- 気相部混合特性
- 微生物(菌叢)
水素溶解に関する指標:kLa、CS
図12 水素溶解に関する指標
kLaの目標
-
図13 リアクタモデル -
式1 水素、二酸化炭素、メタンの物質収支式
※水素の溶解が律速であるとして、微生物反応式を省略する

高負荷で運転するためには高いKLaが求められる
気相部の混合特性について

気相部が完全混合の場合、
投入ガスの4割がGRTの半分の時間が流出してしまう。

押出し流れに近づけてショートカットを防ぐことが重要
当センターでの今までの取り組み①
マイクロバブル(2020)
-
写真3 リアクタ全体写真(気泡塔型と比較) -
微細気泡による溶解効率向上をねらった
結果:水素負荷4.0 L/L/dで出口メタン濃度92%前後
※発泡が多く、十分な稼働時間をえられなかった。
※ノズル部で汚泥が乾燥して閉塞することがあった。
当センターでの今までの取り組み②
霧化(2021)

(IN1-24, 星光技研)
※充円錐ノズルはすぐに閉塞したため使えなかった。
※詰まらないノズルは水滴が大きく、効果がなかった。
-
写真7 蒸留水の霧化 -
写真8 消化汚泥の霧化 -
写真9 消化汚泥の霧化
汚泥を微細な水滴にしてガス接触面積の増大をねらった。
※清水に較べるとわずかな量しか霧化できない(粘性、浮遊物)
※一度霧になると、ミストの分離が困難でガスだけの回収困難
当センターでの今までの取り組み③
界面活性剤(2021)
植物由来の界面活性剤「サポニン」を使用した。
※活性汚泥法では酸素供給に効果があることが知られている。

- サイカチの種子、
- 種子粉砕後、
- サイカチ100 gを24hr浸漬、
- サイカチ25 gを0hr浸漬、
- サイカチ25 gを24hr浸漬、
- 布ろ過
界面活性効果によりkL値が向上し水素溶解が促進されることを期待した。
「サイカチ」、「ムクロジ」抽出物を使用したが、効果はみられなかった。
当センターでの今までの取り組み④
写真11 その他メタネーション写真
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散水床型(2021) -
空塔型(2021) -
泡沫型(2021-) -
加圧型(2022-)
出口メタン濃度

泡沫充填型リアクタは実験継続中(水素負荷26 l/l/d、出口メタン濃度90%)
※出口メタン濃度の目標値は90%以上とした。
菌叢の変化
-
-
図18 Euryarchaeota門の菌叢(属レベル)
優占種が酢酸資化から水素資化メタン生成菌へと変化した
水素資化菌が少ない消化汚泥でも種汚泥として利用可能
※第57回日本水環境学会年会(2023)発表資料
実験結果からのkLaの算出

- 水素溶解が律速
- 水素資化メタン生成菌の飽和定数は低い
液中の水素濃度はほぼゼロと考えると、水素消費速度と水素分圧からkLaを算出できる。
-
図19 水素消費速度と気相部水素分圧の関係
※第58回日本水環境学会年会(2024)発表資料 -
図20 MERとkLaの関係(文献値
※D.Rusmanis et.al. (2019) Bioengineered
まとめ:バイオメタネーション
- 「e-methane」は気体燃料としてカーボンニュートラル社会で重要
- バイオメタネーションは嫌気性消化施設での普及が期待できる
- 技術的課題は「水素の液中への効率的な溶解」
- 現在の性能最高値:水素負荷 40 l/l/d、当研究室:26 l/l/d
- 性能向上因子:水素溶解速度、ガス滞留時間、気相部混合特性、微生物叢
- 水素溶解指標:a気液界面積、kL界面移動係数、CS飽和濃度
- 実験結果からkLaを算出することができる。