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工学部 / 一般教育科 リベラルアーツとは? LIBERAL ARTS

TOPページでは「リベラルアーツ」を,考え学び続ける知恵や指針を与える総合的な知として紹介しました。
しかしながら「リベラルアーツ」という言葉の起源はギリシャ時代にまで遡り,
その時々の社会情勢等を反映してきたことによる意味合いの変遷があり,一言で定義するには難しい言葉です。
ここでは本学の工学部のリベラルアーツが何を目指しているのか説明します。
また関連資料では,ギリシャ時代にまで遡ってリベラルアーツの言葉の定義とその歴史的変遷について解説してみます。

本学の工学部が考えるリベラルアーツとは?

WHAT、HOW、WHYのポップアップウィンドウに記したように、皆さんが向かう未来には不確定な要素が多く一歩先が見えない混沌とした状況になることが予想されます。それに際して工学部の9分野のリベラルアーツはどのような役割を果たすのでしょうか?おそらく皆さんの第一関心は自分の進む工学分野にあり、リベラルアーツの学修意義がどこにあるのか疑念を持つ人も多いのではないでしょうか。ここではリベラルアーツの知が工学を志向する皆さんの未来にどのような意義を持つのかを、今後の工学の諸分野を象徴するいくつかのキーワードを材料に考えていきたいと思います。
 
近年、ビッグデータ・AI・IoT等、工学の最先端のキーワードと絡めてこれからの社会が語られることがあります。我国でもSociety 5.0(内閣府)といった未来のモデル社会が提唱され、そこではフィジカル空間の膨大な情(ビッグデータ)がサイバー空間に集積され、それを人工知能(AI)が解析したのち、フィジカル空間の人間に様々な形でフィードバックするとしています。これはAIをツールとしてはいますが、あくまでも「人間中心の社会」にAIが恩恵や新たな価値を付加することを強調しています。この強調の背景には、AIの進化が人類を超えてしまうシンギュラリティ(技術的特異点)への懸念や、かつての化石燃料の使用開始以上にドラスティックと言われるテクノロジー進化に、我々個人や社会が対応しうるのかといった人文科学的な疑念があります。例えばビッグテックと呼ばれる情報型巨大企業の隆盛は、“情報”がかつての“土地”、“労働力”、“天然資源”に匹敵する価値であることを示唆しています。AIに基づく社会構築は我々に恩恵をもたらす一方で、この価値あるビッグデータを支配しうる特権階層とAIやロボットに取り残された非熟練労働者間の強く分断された階層社会を生み出すことも危惧されています。加えて日本は少子高齢化が顕著な国であり、労働力不足による国力の衰退は緊迫した課題です。その対応策として、AIやロボットによる工学的解決と、移民受け入れによる労働力確保が今後並行して進み、後者の故に社会の多様化が進む可能性は極めて高いでしょう。したがって、AIやロボット工学の最先端技術の領域においても、ただ闇雲に技術開発を進める力ではなく、上述の階層社会化を回避する社会デザインへの配慮や、多様性を持った社会を俯瞰する文理融合的な思考のセンスや解決能力が求められるはずです。こうした物事の捉え方や、解決能力の基礎をなすものがリベラルアーツです。
 
生命維持や遺伝子操作などのバイオテクノロジーの分野でも、デザイナーベイビーを始めとする我々の倫理観の基盤が揺らぎかねない事態への懸念もすでに現実のものとなりつつあります。工学の専門知だけでは解決出来ない領域、すなわち倫理学をはじめとする人文社会的な知と生物科学等の理学の知が表裏一体となった新たな領域で、テクノロジーを行使する上での技術者倫理や生命倫理観がこの分野でも強く求められていると言えます。
 
一方、グローバルな視点で世界を見渡した時、ボーダーレスな地球環境問題やエネルギー問題は現時点でもすでに深刻で猶予の無い難題として工学の様々な分野の前に立ちはだかっています。この解決には工学が直面する技術的課題が多数含まれますが、現象の把握と解決には地球史的な時間軸で地球環境を捉える地球科学に基づく地球的視野が必須です。また持続可能な発展といった解決策の模索が、理工学と人文社会学の知を総動員しないと解けない複雑に入り組んだパズルのような存在であることも容易に想像されます。
 
このような現状を考えた時、数学や物理学といったリベラルアーツの土台の上に築かれた工学の専門知をしっかり学ぶのはもちろんの事、並行して文理の枠を超えた多面的なリベラルアーツを身につけることで、“専門性に立った教養人” としてこれからの社会に貢献することが皆さんには求められています。工大のリベラルアーツを担う一般教育科と総合人間学系教室が中心となり、このような観点で、9分野にまたがるリベラルアーツ教育を展開し、皆さんに未来に向かって考え学び続ける知恵と指針を与えたいと考えています。

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