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研究室VOICE 回路ノイズの“エコー”に着目した新技術

工学部

Profile

工学部電気電子システム工学科

吉村 勉教授

高周波集積システム研究室

図1 専用テストチップと評価用ボード
 皆さんの身近にあるスマートフォンやゲーム機、様々なデジタル家電には複雑な信号処理を一瞬のうちに行う最先端のLSI(大規模集積回路)というものが組み込まれています。その中には、髪の毛1本の太さの百分の一から千分の一のサイズの“トランジスタ”とよばれる部品が数千万個、数億個も入っていて電子回路(集積回路)を構成しています。また、これら一つ一つのトランジスタが1秒間に数百万回もオン・オフの動作をすることでLSIが信号処理を行い、通話をしたり動画を見たりゲームを行ったりといった様々な働きのもとになっています。こう考えると気の遠くなるような話に聞こえますが、過去数十年にわたって集積回路の設計・製造技術は飛躍的な進歩を遂げ、この世の中が技術的に劇的に進化しているひとつの要因となっています。これからもこの進歩は着実に進んでいくでしょう。

 ただ最近、この集積化・高速化にいろんな問題が見えてきました。そのひとつが“ノイズによる誤動作”です。せっかく最先端の技術を駆使して高性能のLSIを作っても、電磁ノイズによって誤動作してしまう可能性が出てきました。私たちの研究室では、電磁ノイズによる回路の誤動作の一つとして、ノイズの“エコー”が重要な役割を果たすことを突き止めました。そこで、研究室で専用のテストチップを設計・製作し、電気特性の評価をしました(図1)。
図2 PLL回路とエコーキャンセル回路
 高速データ通信用のLSIでは高周波で動作する発振器が必要不可欠なのですが、発振器はもともとノイズに敏感という弱点があります。今回、高周波の発振器を内蔵したPLL回路とよばれる回路の“エコー”の実験を行いました(図2)。そこでエコーキャンセルの原理を応用した回路を加えることにより、誤動作が解消することを確認しました。今後も様々な回路のノイズキャンセル技術を開発して、さらなる回路技術の進歩に寄与していきたいと考えています。