世の中の困りごとを直接解決できる作業機をつくる
ホンダといえば四輪、二輪のイメージが強いと思いますが、除雪機や耕うん機、芝刈機などの作業機、発電機、船外機といった製品も開発・製造しています。ホンダではこれらを「パワープロダクツ」と呼んでおり、私が担当しているのは、そのなかでも除雪機、耕うん機など作業機の電装系の仕事です。
ホンダには「120%の良品を目指すことで不良品を出さない」という考え方があります。発売した商品のうち、1%に不具合が出たとする。私たちにとっては1%でも、それを購入したお客さまにとっては100%の不良品です。それを出さないように120%の良品を目指し、量産開発では様々な使われ方を想定し、耐久テストを繰り返し、お客様に安心して使用していただけるように日々取り組んでいます。
この仕事の魅力は、世の中の困りごとの解決に直接役に立てる製品をつくっているということです。たとえば除雪機は、雪国に住む方々にとっては生活に欠かせない機械。生活に欠かせない機械をつくっているということに、大きなやりがいを感じています。
最先端の研究環境に憧れて
電気工事の仕事をしていた父から、「あの建物はウチが施工したんだ」といった話を聞かされて育った私。その影響を受け、「私も電気系の仕事で自分の子どもに自慢できる仕事がしたい」と、大学では電気電子システム工学の分野を専攻しました。
学部時代の後半からは、「ナノ材料マイクロデバイス研究センター」(以下、「ナノ材研」)に所属。初めてナノ材研のクリーンルームを見たとき、その先端的で充実した施設設備に感動し、「この環境で研究をしたい」と熱烈に思ったのが理由です。
選んだ研究テーマは、「透明半導体酸化亜鉛(ZnO)を用いたフレキシブルデバイスの研究」。わかりやすくいうと、「透明で曲げられる電子デバイスの開発」です。開発に成功すれば、紙のように薄い情報端末に映像を写したり、車の窓の曲面ガラスがディスプレイになったりということにつながる、当時としては夢のような研究でした。
切磋琢磨しながら研究に没頭
研究では、透明半導体であるZnO(酸化亜鉛)を、透明なPEN(ポリエチレンナフタレート)基板に堆積させていくのですが、PEN基板でのデバイス作製は、1センチ角に切った薄い透明フィルムをピンセットで扱い、多くの工程を踏む、非常に細かい作業。つまみ損ねて基板表面をガリっと削ってしまい、それまでの数時間分の工程が全て無駄になったことが何度もあります。当時は夜遅くまで作業できたので、週6日間、朝から晩まで毎日研究に打ち込みました。学会発表の機会もたくさんあり、先生方のご指導も手厚く、発表用資料や実験レポートを必死になって作成していた記憶があります。
いま振り返ると、「よくそんなにがんばっていたな…」と思うのですが、ナノ材研には、和気あいあいとしながらも互いに切磋琢磨する雰囲気があり、とにかく研究が楽しかった。社会人になると、朝から晩まで余念なく研究に没頭するのはなかなか難しいものです。若い人たちには、最先端の研究環境が整ったナノ材研で、研究開発の楽しさをぜひ味わってほしいと思います。
ナノ材研で培った力を武器に世界へ
ナノ材研での毎日の研究活動は、私自身を大きく成長させてくれました。機械設備との向き合い方や技術的知識はもちろん、研究の進め方や管理などを一任されたことで計画力や業務推進力も身についたと感じます。また、国内外での学会発表を通じて資料作成力、プレゼンテーション力など様々な力を磨くことができました。研究活動によって培われた力は確実に今の私の武器となっています。学生時代の研究と今の仕事は直結しませんが、技術者としての素養は高いレベルで習得できました。
製品を通じて、世界中の人々の喜びにつながる仕事ができることは大きなやりがいにつながっています。
その土地、その時代で求められるものは何か。アンテナを高く持ち、グローバルな視野を持って、世界中の人々の期待を超える製品を届けていくのが私の目標です。
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学生時代に所属していたナノ材研での研究風景